従業員やその家族にきめ細かく配慮していますか

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

営利を追求する企業は、従業員を生産手段として雇用しているわけであるから、家族にまで気配りする義務はないという考え方もあるが、従業員が意欲をもって働くのは家族の安全・安心を願ってのことである。したがって、家族は従業員と一心同体であり、家族の理解と協力がなければ十分なパフォーマンスを発揮することはできない。
 ある企業での話であるが、従業員がある日を境に欠勤や遅刻が多くなったので、上司は本人を呼び注意をしたところ、「申し訳ございません。注意します」と繰り返すだけであったが、その後もあまり改善が見られなかったので、会社としては解雇せざるを得ないと決断して本人にその旨を通告したところ、彼はわかりましたと静かに応えた。
 社長が直接面談して、欠勤や遅刻の理由を最後に尋ねたところ、「妻が急病で倒れてしまい幼稚園児の子供の送り迎えや家事全般をこなさなければならないので」、ということであった。以前の勤務成績が良かったこともあり、社長の決断で育児休業を最大限取らせ、かつ有給休暇の取得と組み合わせて対処することにした。
 何故この社員が最初に本当の理由を申し出なかったのかという疑問が残るが、少なくとも上司との間のコミュニケーションに問題があったものと推察される。つまり、上司は仕事中心の管理者で、家庭の事情にまで配慮するタイプではないことを彼が熟知していたので、敢えて申し出なかったのではないだろうか。
 企業としての対応には限界があり、一定の生産性が維持できなければ解雇などの措置もやむを得ないのは事実であるが、双方向のコミュニケーション・システムが確立されていれば、お互いに共有できる情報から最適な解決策を見出せる可能性はあったはずなのに、仕事に忠実であるというだけの二人(上司と部下)の組み合わせは不幸である。
 経営戦略と人事戦略は表裏一体のものであることは前述した通りであり、得がたい人材であるかどうかを見極めなければ、人的資源は社外に流出してしまうことになり、経営目標達成の可能性はそれだけ薄くなる。人事戦略が人事管理原則に則って遂行されているかどうかを監査する機能を活用すべきである。