顧客第一主義の精神を率先垂範して実践していますか

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顧客第一主義をモットーとしている経営者は多く、それなりに実践している姿にもお目にかかれるが、理念的経営に徹した結果の姿なのかどうかは判別がつかない。もっとも、この主義を貫いて実践しているのであれば、経営目標達成のために、理念を押さえ込んだ合理主義によるものであったとしても、これを非難するには当たらないかもしれない。
 近代経営こそマーケティング志向が定着しているものの、生産主義時代、販売志向時代の反省を踏まえて現在の思考様式にパラダイムチェンジしたもので、販売するための便法として顧客第一主義を唱えたとしても、それぞれの企業生成過程からしてやむを得ない面もあるように思われる。現に一流といわれている企業でもそうした本音が垣間見られる。
 しかし、ITの急激な発展により、これまで非対称であった情報が、誰でもリアルタイムで入手できるようになり、消費者機能は格段に向上してくると、これまでブラインドになっていた、とっておきの企業機密でさえもあっという間に白日の下にさらされる。こうした時代を認知したうえで、顧客第一主義の意義を改めて問い直すべきである。
 つい最近の話だが、ある小売業で開発して委託生産した商品が好評だったため、他の業者にも見積書の提出を求めたところ、別の製造業者から半値程度の見積書が提示されたというのである。そこで先に委託した業者に問いただすと、当社でもその値段でできますよという返事がいとも簡単に返ってきたという。
 百年の恋が一瞬にして冷めるとはまさにこのことである。この小売業の社長は、自社は消費者の購買代理人を自認し、マーチャンダイジングに気配りしているのに、信頼していたパートナーとも言うべき存在であった協力企業から、「バレテモトモト」のような対応に触れ、消費者の皆様にも顔向けができないと嘆いていた。
 その後の取引がどのようになったかは確認していないが、このような企業は取引先から敬遠されることは確実で、そうなれば企業の存続も危ぶまれることになるから、「できるだけ高く売りたい」という本音と消費者の満足を調整する機能を備えていなければ成らない。   これがすなわち価値の交換を中核に据えたマーケティングなのである。