コーポレート・ガバナンスの必要性を認識し、これを行動規範としていますか

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コーポレート・ガバナンスを行う第一の目的は、誰のために経営を行うのかという素朴な疑問に対して、明確な答えを用意しておくことである。企業は従業員、株主、取引銀行、仕入先などの取引先、主要な顧客などに、目的遂行活動を通じて最も影響を及ぼす主体である。この主要な利害関係者を明確に規定することである。
 こうした利害関係者の利益を代表するため、経営の監視を行う必要があり、この機能は株主総会、取締役会によって担われるが、実質的に機能するのは取締役会であろう。株主総会は法的には企業における最高意思決定機関であるが、実際の経営は専門の経営者に委任しておこなわれることから、専門的経営者の経営活動を監視することが重要である。
 現在のコーポレート・ガバナンスは、法的義務ないし倫理的な義務を遵守すれば足りる形になっており、経営の信託者である株主は受託者である専門経営者の手腕にひたすら期待するほかないが、その最低義務さえも遵守できず刑事責任まで問われていることは周知の事実であることを思えば、上記の利害関係者は極めて不安定な状況に置かれている。
 本稿のテーマである業務監査はこのコーポレート・ガバナンスを実効あるものにすることを目指しているものである。こうした安心感を提供することにより、専門経営者に対するエージェントコストは軽減されるから、機関投資家だけではなく一般の投資家や金融機関からも評価され、企業の業績も高くなる理屈である。
 このように企業の公式な監視機能としては、株主総会、取締役会があるが、外部の機関も間接的ではあるが監視機能を果たしている。例えば金融機関は企業を外部から評価し、融資の限度額を設定しているので、厳しい査定にあえば資金調達の道が閉ざされることになり、他のステークホルダーにも多大な影響を及ぼす。
 こうした状況を現状のままに放置しておくということは、お手盛りによる自己評価を容認するのと同じであるから、モラールに反した経営者行動も減少するはずがない。自らを律し経営の透明性を高めるためには、社外取締役の導入や第三者による監視委員会を設置するなど、思い切った措置を講じることも視野に入れるべきである。