明確な経営ビジョンをもち、これを従業員にも語りかけていますか

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経営ビジョンは経営理念を源とした経営戦略の到達点である。言い換えれば経営の展望とでも言うべきものであるが、組織として経営戦略を実効あるものにするためには、企業の望むべきベクトルが全メンバーに共有されていなければ、協働システムとしての機能は発揮されないので、経営者は夢を語りかけることを怠ってはならない。
 組織の目標を数値で設定しこれを達成するためには、共通の行動様式が必要であるが、それ以前に、この目標が組織にとってだけではなく、メンバー個人にとっても夢のあるものでなければ、真の協働システムは構築できない。夢の実現に向けてどれだけ自分を動機づけ、自己啓発に精励できるかが企業文化のレベルでもある。
 企業には会社の憲法とも言われる定款があり、これには企業の目的が記載されているが、経営の現場ではこれを噛み砕いた形で目的を再設定し、いわば建前に過ぎない絵に描いた餅をより臨場感のあるものとして示す必要がある。それには、規則や命令などといつたフォーマルな呼びかけだけではない、生のコミュニケーションがものをいう。
 経営者は毎週の朝礼などで、わが社の進むべき道や従業員の行動規範について語りかけていると自負している。しかし、残念ながら、従業員の受け取り方は必ずしも社長の期待に応えるものとなっていないようである。こうした現状を経営者はモラールの低下現象として捉えている場合も少なくない。
 経営者側から言わせると、与えられた任務を従業員が忠実に遂行していなため、付加価値生産性が低い水準に停滞しており、その結果労働分配率が高水準になっているといい、従業員側では、従業員一人当たりの人件費が伸びないので、モラールが低下しているために付加価値生産性が上がらないのだという言い分をもっている。
 鶏が先か卵が先かという問題に、裁判官でもない私が裁定を下すことは差し控えたいが、このように硬直した状態を放置しておけば、経営目標は達せられるはずがないから、そのときの被害者は当然私ではないことは確かだ。より大きいリスクを背負っている経営者がリーダーシップを発揮して打開策を見出すしかない。