職務基準書と職能要件書は、基準と要件が対応関係にあるので一つの書類に纏められていることが多いが、全く文書化されていない場合もあるほか、評価軸が定まっていないまま結果として評価されているというケースもある。いずれのケースも、経営者サイドとしては何らかの評価尺度は持っているはずである。
しかし、評価される従業員サイドからしてみれば、評価軸が明確に示されていないと、仕事の成果が正当に評価されているのかどうかを期中にチェックすることができない。こうした場合、給料が唯一の評価結果として示されるわけだが、これが労働の対価として正当なのかどうかは全く判断がつかない。
こうした組み合わせはまさに呉越同舟であり、とりあえず同じ舟に乗り合わせてはいるが、いざ対立関係が顕在化すれば袂を分かつことになる。従業員一人ひとりの能力は高くても、共通の目的に対して協働するシステムになっていなければ、最大の経営資源である人材を完全燃焼させることはできない。
かつて、職能給の導入を目指して行われた職務調査は、務基準書と職能要件書を策定することが前提であったため、手間暇かけた割にはあまり機能しないという理由で取り組みがやや緩慢になっているが、給与制度がどのようなものであるかに関係なく、自分の仕事の内容とこれを支える能力の種類やグレードを把握しておくことは必要である。
ここでいう職務基準とこれを支える職能要件とはそうしたものを意味するものであるから、どんな企業にも最小限度必要なものである。したがって、形式はともかく、あらかじめ定められた仕事の内容、期待される成果のグレードなど、客観的に認識できるようなものであることがその要件である
私の場合は、まずどの企業にも共通するような簡便シートを作成し、これを用いて幹部社員の考課者訓練と従業員のモラール・サーベイをかねて評価させてみることにしている。つまり、幹部社員には部下の評価をさせ、社員には同じ内容で自己申告をさせるのである。かなり乱暴なやり方だが、導入の必要性を認識させる動機づけにはなる。
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