従業員の給料や福利厚生などの処遇面は、同業他社や地域水準と比べ遜色ないですか

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企業の財務面からいうと、従業員の給料や福利厚生費はコストであるが、従業員側にしてみれば生活を支える重要な所得である。したがって、コストの最小化を目指す企業と所得の最大化を望む労働者は、純理論的には誘引と貢献のバランスを考慮しながら、両者の合意に基づき雇用契約を締結することになる。
 しかし、労働市場は流動的で買い手である企業の業績が向上すれば、有効求人倍率は上昇するので採用はタイトになるが、逆の場合は企業が採用を手控えるので、労働市場は相対的に供給過剰になってしまう。こうしたメカニズムは当然同業他社や地域水準にも反映されるので、これを無視することは事実上不可能に近い。
 企業の立場からすると、経営を維持・発展させるためには、必要最低限の人員は確保しておかなければならないので、生産性が低い状態にあったしても同業他社や地域水準を下回った処遇はできない。つまり、企業としては先行したコスト(現在の非効率性)を将来の働きにより回収したいと考えているわけである。
 一方の労働者側は、同業他社や地域水準と同等であるのは十分条件ではなく、必要最低限の条件であると考えているから、企業の受注や販売が好転した場合、稼働率が上昇した分、処遇面が改善されて当然と考えるのである。このような立場の違いは企業の下方硬直性構造を助長させる結果となってしまうのである。
 企業はこうした下方硬直性に耐え切れず、正社員数を減らしパートやアルバイトでまかなおうとするインパクトが働くことになる。こうした社会現象が加速しつつあることは周知の事実であるが、こうしたその場しのぎ的な対応では、欧米に比べ低い(流通業)といわれている付加価値生産性を向上させることは難しい。
 このように、ミクロ的に見れば企業と労働者の関係は、どちらに軍配を上げるという問題ではなく、それぞれの主張はやむを得ないともいえるが、企業の競争力が低下してしまえば、労働者の所得も不安定なものになるのは明らかである以上、双方の知恵によって誘引と貢献のレベルを上げるしかない。