創業の精神や経営理念などは社是として明文化かされ、社長室などに掲げられているが、その真髄を企業の行動規範として位置づけ、実践しているかどうかは時代背景の相違もあり企業により様々である。しかし、わが社らしさと言うものは、この創業の精神に由来するところが多く、何らかの影響を受けていることは確かである。
個別の内容を見ると、顧客に対する接し方に関するもの、モノづくりの心構え、ヒトづくりや人間感に関するものが多いように思われるが、共通しているのはモノの考え方や価値観を独特の哲学をもって語っているということであり、正しく創業の精神が感じられ含蓄にあふれるものばかりである。
企業によってはこの社是をスローガンやモットーと位置づけ、朝礼やミーティングの開始時(終了時)に全員で復唱しているなど様々な形で運用されているが、時間の経過とともに色あせてしまい、単なる儀式と化しているように見えることもあり、必ずしも正しく実践されているとは限らない。
バーナードによれば、意思決定には機会主義的、合理主義的要素と道徳的要素が含まれ、経営理念は道徳的要素にかかわっているとしている。また、サイモンは、意思決定に導く決定前提として、事実判断である事実前提と価値前提に分け、経営理念はこの価値前提にかかわっていると説いている。
いずれの説を重視するかは別として、人間の行動は事実的合理性によってのみ行動するものではなく、道徳的感情によってコントロールされるものであるから、企業の維持発展のためには、行動規範としての経営理念を明文化し、社員全員で共有できるものにしなければ意味がないので、あまりにも抽象的なものは避けるべきである。
根本的な創業の精神は不変であるとしても、時代感覚の異なる従業員層に理解されにくいものは、建前としての精神論として受け取られる虞もあるので、実際に運用するにはかなり噛み砕いた言い回しで、親しみやすく臨場感のある内容にリフォームすることも一案である。取り扱い製品や業態が創業時と変化している場合は特に検討すべきである。
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