IT化の進展により商品によっては商圏をそれほど意識する必要がなくなってきている場合もあるかもしれないが、顧客の顔が見える取引が営業の基本である以上、営業の拠点の求心力はやはり商圏の範囲と密接な関係があると考えるべきである。ただし、以前とは異なり、空間的な広がりのみを基準とした商圏の設定は再考されるべきである。
小売業などの場合、距離的には商圏の中心に近いはずなのに、橋(川)を境に別の購買権で買い物をしている場合が多く見られ、空間距離だけではなく時間距離や心理的距離も考慮して商圏を括りなおさなければならない場合もある。このように自社からみれば商圏でも、消費者(顧客)の感覚では購買圏ではないことにも留意しなければならない。
それではどのような基準で商圏を設定すればよいのかということになるが、商圏とは自社がその営業拠点を中心にしてどのようなマーケティングを展開しようとしているのかによって境界線の引き方が決まるのであるから、場合によっては顧客が購買圏ではないと感じていたとしても商圏に組み込むことはあり得る。
ごく一般的な基準を示せば、消費財、生産財など取扱商品の性質および商品力、来店・配送などの必要性、コミュニケーション距離、競合店の分布状況、業種・業態その他である。これらの組み合わせと自社の経営目標によって拠点活動が決まるから、商圏の広狭やエリアの形なども他社と異なるのは当然である。
したがって、人口動態の変化などについての受け止め方も企業によって温度差があり、顧客機能を高めるようなマーケティングを展開している企業にとっては、それほど商圏の縮小(拡大)要因にはならないかもしれないし、一定量の特定需要が継続して見込めるのであれば、商圏として健在であると評価できるかもしれない。
いずれにしても商圏は固定的に捉えるべきではなく、潜在需要のありかを探知しながらアメーバーのように浸透して商圏を拡大していくやり方が主流となるものと思われる。こうした考え方では、商圏はもはやコンパスで描ける同心円ではなく、場合によっては離れ島であることもあり得るなど、設定条件自体の変更も含めて考える必要がある。
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