倒産回避のための予防策

倒産の要因としてよく挙げられるのが、既往のしわ寄せ、売上げの不振、回収の失敗、放漫経営などである。こうした分類は企業の側からの見方ではなく、第三者が倒産企業を評価した場合のことで実態は把握し切れていないこともある。特に、放漫経営は終末の状況であり本来的な原因は別にある。
 それは人の死亡原因が心不全と発表されるのと同じで、心不全という病名ではないのと似ている。つまり、原因となる病気がありそれが悪化した結果、最終的に心不全となり命を落としたのである。放漫経営も同じことで、あらゆる努力が実らず力尽きてしまい、気力を喪失してしまい、結果的に放漫経営といわれる状態に陥ってしまったのである。
 倒産とは、法律的な定義で言えば、自己破産や破産宣告を受けるなどの状態を言うが、一般的には不渡り手形を出し、金融機関から取引停止処分を受けたときに、事実上倒産ということになるのが通例である。ということは、不渡りを出さなければ新たな融資は受けられないまでも倒産には至らないわけである。
 したがって、債務過剰ということだけで倒産になるのではないとすれば、一体どのような状態になればそのような烙印を押されることになるのだろうか。少なくとも、借入金の額や負債の比率ではないことは確かであると考えれば、決定的な境目は信用が破壊されたときであるといえるのではないか。
 つまり、金融機関や債権者から信用をなくしてしまい、期限の利益を失って差し押さえなどにより、法的手続きが開始され時ということになる。事実、かなりの債務過剰でも債権者の協力の下、何とか営業を継続している企業もあれば、総額としてはそれほどでもない債務なのに、清算や倒産に追い込まれている企業もある。
 もちろん、こうして生き延びている企業が必ずしも信用があるとは限らない。倒産手続きに入ったとしても、配当の可能性がないのでやむを得ず継続させているといった場合もあるからだ。こうした場合は別として、付加価値を生み出せる可能性を明確にして、自社の企業価値を評価できるよう態勢を整えておくことが最大の予防策である。