遅すぎた経営改善への取り組み

水産加工食品製造業のA社の売上高対付加価値率は、人件費率:21.1%、減価償却費率:1.6%、租税公課率:0.3%、賃借料率:3.3%、支払利息率:2.6%、営業利益率:2.9%、付加価値合計比率では31.8%である。賃借料率と支払利息率が高いことから、設備資産は賃借に依存しておりそれほど大きくないが、運転資金の借入がやや過大のようである。
 これを総付加価値に占める割合に直すと、人件費率(労働分配率):66.4%、減価償却費率:5.0%、租税公課率:0.9%、賃借料率:10.4%、支払利息率:8.2%、営業利益率:9.1%となり、総付加価値率も比較的高いうえ労働分配率も低いので、借入金の返済は許容限度内であると判断される。
 この場合の返済財源は、税引き後の利益率4.6%+減価償却費率5.0%の合計9.6%、つまり、総付加価値のうち1割弱は借入金の返済に当てられることになるが、この場合問題となるのは、借入金の残高と返済期限である。C社の場合は借入金の残高は容易に推定できるように売上高よりは少なかったが、一般的には限度を越えていた。
 しかも、問題はもう二つあったのである。その一つは、複数の金融機関からの借入金のいずれもが返済期限にあるということである。二つ目は、これらの借入金のうちの何口かは、金融機関の性質上、借り換えは不可能であるため一括返済を迫られており、この分の資金手当ても資金繰りに大きくのしかかってきていることである。
 上記のような経営改善の兆しが見え始めたばかりであるのに、金融機関との折衝が円滑に進まず、結局はデフォルトに陥ってしまったのである。このような状況に陥ってしまった経緯については、他の要件も複雑に絡んでいるので一概に断ずることはできないが、やはり、売上主義が裏目に出てしまったためといわざるを得ない。
 つまり、今回のような改善計画を積極的に打ち立て、金融機関にも提示し理解を得るという姿勢がなかったことが命取りとなってしまったのである。経営者は足元を固めることなしに、製品開発に心血を注ぎ一発逆転を狙ったが、その姿勢が裏目に出てしまい金融機関からも半ば愛想をつかされた形になってしまったということである。