売上高に固執してデフォルトに陥ってしまった事例

建設関連業のA社の売上高対付加価値率は、人件費率:27.4%{業界平均(以下単に平均記す):30.7%}、減価償却費率:2.2%(平均:1.7%)、租税公課率:3.5%(平均:0.8%)、賃借料率:6.8%(平均:2.4%)、支払利息率:3.5%(平均:0.8%)、営業利益率:-6.2%(平均:2.3%)、付加価値合計比率では37.1%(平均:38.7%)である。
 他の経営指標をもう少し詳細に見てみると、まず、売上高対人件費比率は業界平均に比べ3.3ポイント低いが、従業員一人当たり月平均人件費で見ると、当社は232.5千円であるのに対して、平均は293.0千円であることから、人員が過剰かあるいは付加価値生産性が低いことが窺われる。
 事実、従業員一人当たり付加価値は、3,487.3千円(平均:4,872.7千円)で、平均より1,385.4千円も低い。また、従業員一人当たり有形固定資産は、11,596千円(平均:3,300千円)で、設備効率(付加価値÷有形固定資産):0.3回転(平均:1.48回転)である。つまり、有形固定資産の稼働率があまりにも低いため、付加価値生産性が低くなっている。
 売上高対減価償却費率、売上高対租税公課比率ともに高いのは、この設備の過剰を表しているが、その設備資金は借入金に依存している(売上高対支払利息比率が大きい)。さらに問題なのは、売上高対賃借料比率が平均に比べ2.8倍も高いことである。A社の特徴は、過剰設備、過剰な資産賃借、借入依存体質である。
 これらの特徴を主成分分析によりポジショニングマップを描いてみると、主成分1は総資本効率が高いか固定資産が多いかであり、主成分2は売上高が大きいか小さいかという切り口が得られた。A社のポジションは、主成分1、主成分2ともに小さい(固定資産が多くかつ売上高が小さい)に位置していることが確認できた。
 ちなみに、業界の優良企業は、売上高はA社とほぼ同じ位小さいが、総資本効率が高いという位置にある。つまり、A社は売上げにこだわらず、稼働率の低い設備の廃棄と資産の賃借契約を解除するという意思決定をすれば、縮小均衡型ではあるが優良企業に変身できる可能性があったものと思われるが、あえてデフォルトへの道を選んでしまった。