経営破綻にいたるメカニズムの検証

本シリーズでは、経営破たんに至ってしまった企業の原因を解明することで、企業の革新機能を回復させることを促すのが目的である。中小企業の経営者は企業家精神が旺盛であるため、設備投資などにもかなり積極的であるが、市場環境の激しい現状においては、この積極性が裏目に出ることもある。
 特にこのときの経営判断の誤りは金融に頼り過ぎてしまうということである。更に深刻なのは、金融機関自体の「目利き」能力が欠落しているため、不動産などの担保の保有高のみで融資の是非を決定してきたため、企業の返済能力が低下すると、企業の側にも金融機関の側にも、返済財源となる付加価値を生み出す方向が見付出せなくなってしまう。
 もちろん、金融機関は企業のお抱えコンサルタントではないので、そこまでは責任は負えないということかも知れないが、そうだとしても、少なくとも融資を決定する時点で、企業の生み出す付加価値額とその構成比率ぐらいは把握し、将来についても確度の高い展望を共有しておくことは必要ではなかったのだろうか。
 こうしたスタンスは、企業がデフォルトに陥った場合も変わらず、債権者と債務者としての立場を頑なに固執する。貸付金を回収することは、株主や預金者を守るためには当然のことであることは疑う余地はないが、正常な取引が継続できなくなった時点では、これらのステークホルダーの損失を最小限に止めることも業務の一環であるはずだ。
 しかし、日々劣化しつつある企業の返済能力に対して、何等アクションを起こさず、被害者意識だけを募らせている。私が関わった企業再生の中でも、約1億円の焦げ付き債権を持っている金融機関が、公的支援機関などの介入で、最終的に70%程度回収したが、被害者意識は変わらず、30%損をしたと考えているようだ。
 こうした構図は当分の間継続されると考えなければならないとすれば、企業も安易に融資にのみ頼り過ぎないよう、自助努力する方向を見出さなければならない。そうした意味で、経営者の決断を促すためのサインとして、付加価値と付加価値生産性の2つの指標を用い、その有用性を検証してみることとしたものである。