新卒者の定着率は七・五・三などと揶揄されているが、新卒者は本当に飽きやすく粘り強さがないのだろうか。生活水準が豊になった今日、多少弱々しく感じる若者が目に付くことは否定できないかも知れないが、本質的には仕事で達成感を味わい自己実現を図りたいと願っているのはいまも昔も変わりはないような気がする。
しかし、求人倍率が高くないのに離職率は結構高いのは何故だろうか。これは多分、「努力は必ず報いられるだろうという信念」に揺らぎあるからに相違ない。若者に限らずヒトは達成の可能性を確信した時に強く動機づけられ、パフォーマンスを発揮すると考えれば、中途退職を決意するということは、動機づけが不十分であったことになる。
V.Hブルームは「期待理論」の中で、努力は必ず報いられるだろうという信念のもとで達成感・自己実現(期待1)が図られれば、報酬を伴った昇進や昇格(期待2)が期待できるから、これらの期待可能性が自分の努力目標になり、強い動機づけに繋がると説いている。したがって、その連鎖確率の高さを認識できることがキーポインとなる。
経営組織の中でこの理論を応用するとすれば、どのような方法が考えられるだろうか。期待は個人によって異なる主観的なものではあるが、達成すべき成果とこれに報いる報酬を客観的に示すことにより、自分が発揮できると確信する努力度と比較して、その魅力度を事前に測定できるようになりミスマッチはかなり予防できる。
例えば、30歳台のライフスタイルを具体的に募集要項などに示すことで、自分の努力で勝ち取れる可能性を事前に測定させ、その上で採用すれば定着率は高まることになろう。そうした提示が馴染まないと判断される場合でも、企業の理念を経営者が直接伝えることができれば、企業の魅力度はかなり鮮明に伝わる。
要は定着率の悪さを新卒者の心変わりと決め付けるのではなく、企業の魅力度を理解させる努力が足りなかったのだという発想の転換も必要である。初任給や労働時間、休日数などの定量的な情報を開示しただけでは、企業の真の魅力が伝わらないので、過大な期待とのギャップに耐え切れなくなり離職に至るものと思われる。
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