製品ラインの拡張・絞込みの検討は経営シナジーの分析から

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わが社は総合化を目指すべきかそれとも取扱商品を絞り込んで専門化に徹するべきか、などとよくクライアントから質問を受けることがある。当然こうした質問にはどちらがベターであるという絶対的な答があるわけではないが、それを承知の上で敢えて問いかける心情も察するに余りある場合が多い。
 そうしたときは、小売業を例に説明し判断は経営者に任せることにしている。まず、総合店のメリットであるが、ある特定のラインないしアイテムが何らかの事情で販売不振に陥っても、他の商品の販売でカバーすることが可能なので、全体の売上げを一定水準に保つことができる。
 しかし、このメリットを支えるためには大きなリスクも覚悟しなければならない。すなわち、品揃えのためのスペースの確保、在庫費用の増大などはもとより、豊富な商品知識習得のために従業員の教育訓練費用もかなりの負担になるほか、デッドストックや品質劣化、盗難防止などの管理にも気配りが必要となる。
 一方専門化のメリットは、ラインが限られているため従業員の商品知識を深いものにすることは比較的容易であるから、顧客満足度も高まる可能性が高いが、取扱商品の売上げが減少した場合は、全ての売上げがなくなるわけであるからダメージは大きい。
 製造業の場合でも、立ち上がりは単品メーカーだったが、いつの間にかベンダー企業に衣替えをしていることはよく見受けられる。このタイプの企業は自社の経営資源を有効に活用し、総合化に成功している場合が多いが、形としては同じように見えても、小売業者など川下の戦略に翻弄され心ならずも総合化に向かっているタイプもある。
 後者の場合は、純潔主義をかたくなにまもり付加価値生産性を高めることを理念としているため、在庫過多になりやがて資金繰りが悪化する。このような実態を見るにつけ、総合化とか専門化の議論は全くナンセンスであり、市場の変化に注目しているかどうかによって方向が異なる経営革新の問題として捉えるべきである。