資金調達は企業価値を担保として

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金融機関の貸し渋りが新聞、テレビを賑わした時、ある商工会議所で「貸し渋り対策」というタイトルで話をする機会があった。前日に某テレビ局から取材の申し込みがあり、私としては特に断る理由もなかったので、会議所の同意があれば結構ですと答えた。
 ちょっとした行き違いがあったようだが、とにかく講演が始まり取材のカメラが回り始めたが、最初の意気込みよりかなりトーンダウンしたように感じられた。私の力不足が原因だろうと、正直少しがっかりした記憶があるが、その日の夕方の番組で放映されたのを見て気がついた。
 原因は私の話の内容だったようだ。それというのも、取材スタッフは、金融機関の貸し渋りを糾弾する内容を期待していたのに、私の話は、「企業は現実を受け止め企業価値を客観的に把握とて置くことが肝要である」という内容だったからである。もっとも、がっかりしたのはテレビ局だけでなく、集まった聴講者も同じ思いだったようだ。
 ニュースバリューを求めて取材に当たったスタッフには申し訳ないが、私の役割は企業の財務体質強化に寄与することだったので、もともとミスマッチがあったようだが、少なくとも、企業経営者には謙虚に現実を受け止めてほしかったのである。
 私が伝えたかったのは、金融機関の対応を非難しても自社の経営に何のプラスにもならないし、もともと資金調達が思うに任せないのは、担保不足や保証人の問題ばかりではなく、経営の透明性が低いため、その分が金融機関から割引されて評価が低くなっていることに大きな原因があることを知ってもらいたかったのである。
 今後は、「クイックローン(無担保、無保証の融資)」などが普及する見通しだが、それにつけても企業価値が客観的に評価されていることが、担保価値を高めることに他ならないから、中小企業はデメリットの開示も含め、経営の透明性を高める戦略へと舵を切るべきである。