前回は労務管理の意義について述べ、労使のコミュニケーション・ギャップを調整する物理的な手法として、重回帰分析を用い、従業員一人当たり月平均人件費と売上高対人件費比率が均衡するゾーン内で従業員一人当たり年間売上高を高めるやり方を紹介した。
この方法は、いささか乱暴に見えるかもしれないが、その根底にある思想は、労働市場における売り手と買い手の間における価値の交換である。つまり、交換価値と市場価値の最も望ましい均衡点をマーケティングの手法で解決を試みたものであり、労務管理の基本スタンスから逸脱しているものではない。
それではその労務管理の基本スタンスとは何かといえば、労働市場関係に偏重するのではなく、協働関係や人間関係にも十分配慮し、そのメルクマールとして処遇面での均衡に拘るというのでなければ、人間性が疎外されてしまい、企業は一過性の利益獲得集団と化してしまう。
時節柄なのだろうか。最近よく寄せられる労働問題にサービス残業に関するものが多いが、これらは労働基準法を無視した解決はあり得ないものの、反面法律による決着は労使双方にとって大きな傷を残す結果になることもしばしばあり、いったい何を勝ち取るための争いだったのかさえ見えなくなってしまう。
こうした労働問題の背後には、鬱積した感情論が渦巻いており、もはや協働関係も人間関係も破壊されコストと所得のせめぎ合いそのものと化している。果たせるかな、決着のラウンドは法律論争に持ち込まれることになり、このころになると労使双方の言い分は水と油のようで、妥協の余地は全くなくなっている。
この例に学ぶまでもなく、争いの芽を生まないようにするにはコストがかかり過ぎて非現実的である。しかし、一旦争いが決定的になってしまってからではリスクはもっと膨大になる。してみると、争いの芽を育てないように管理することが労務管理の基本スタンスということになりそうだ。
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