労務管理の意義・目的を再確認する

労務管理とは、「人間の育成、福祉の増進」と「企業目的の達成の促進」を究極の目的とし、個人および組織としての従業員の考え方を的確に把握し、技術的諸条件の動きに対応しながら、直接的目的として、「労働意欲の充足」「協働体制の確保」「労働力の効率的利用」を図って行く一連の諸施策である(本多壮一教授説)。
 私も企業の現場で賃金制度などをデザインするとき、労使の調整に迷った場合はこの基本理念に立ち返って、企画を練り直すことにしている。しかし、現実にはトップと従業員の間のコミュニケーション・ギャップもあり、双方から歓迎される制度を立案するのは困難を極める。
 そこで導入したのが、従業員一人当たり年間売上高、従業員一人当たり月平均人件費、売上高対人件費比率、労働分配率などの相関関係を調べ、経営側と従業員側の満足が均衡する水準を見つけ出すという方法である。用いた手法は相関分析と重回帰分析である。
 ここでの仮説は、従業員一人当たり月平均人件費、売上高対人件費比率、労働分配率などを上げれば、従業員一人当たり年間売上高を上げることができ、従業員側の満足度も上がるが、上げすぎると、経営者側の満足度は低下するに違いないと考えたのである。
 通常は、経営者と労働者はこの点に関して率直に話し合うチャンスは少ないし、あったとしても、明確な根拠をもって主張し合うのは困難である。特に組合がない場合などは決定的対立を避けたいという意識が働き、お互いの本音を把握するのは難しい。
 こうした意味で、ある企業で重回帰分析を行った結果、以下のような回帰方程式が得られた。
従業員一人当たり年間売上高=104.6398×従業員一人当たり月平均人件費?3261.0333×売上高対人件費比率+37444.8086
 この回帰式の意味するところは、従業員一人当たり月平均人件費と売上高対人件費比率は対立関係にあることが明白であるから、経営側と従業員側の満足が均衡する水準は容易に見つけ出せることになる。例えば、売上高対人件費比率を固定することで、従業員一人当たり年間売上高と従業員一人当たり月平均人件費も定まる。なお、この回帰式の決定係数は0.9929であるから、極めて当てはまりがよいことを示している。