全社事業投資シミュレーション

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全社事業投資といえども、個別の事業投資の集合であるから、基本的には事業投資採算シミュレーションと同様のプロセスで分析を行うことになる。ただ、全社事業投資の場合は、個別の事業投資とは経営の視点が異なるため、評価は必ずしも一致しないことがある。
 例えば、事業投資採算シミュレーションでは、採算性は比較的良好という結果がでたとしても、全社事業ではでM&Aを視野に入れてシミュレーションを行っていたとしたら、自社で一から投資するよりも、他社で投資した設備や人材などをまとめて買収した方が、企業全体としての投資効果が高いという場合である。
 このように全社レベルでの検討では、個別事業投資採算性の組み合わせによる相乗効果も同時に検討されることになるので、事業投資採算シミュレーションのプロセスに加えて、企業の経営戦略に整合させるための分析が加えられることになり、その分析は通常ポートフォーリオモデルを用いて行われる。
 ポートフォーリオとは、リスクは高いが収益可能性も大きいプロジェクト、安全性は高いがあまり収益性は期待できないプロジェクトを適宜組み合わせて、目標水準をクリアするまで変数を入れ替えしてシミュレーションする方法で、株投資などの際に用いられる方法である。
 企業は株主の信託に応えるためには、投下された資本を安全かつ効率的に運用する義務を負っている訳であるから、絶えず、経営資源を最適に組み合わせて、これを活用しその運用益を最大にするためにトップマネジメントは戦略的意思決定を行っている。
 こうした一連の意思決定過程においても、重要なことは現状分析力と将来の予測である。ここで威力を発揮するのは主成分分析を用いたポジショニング分析と重回帰分析であるが、これらをより有効に活用するためには、何を目的とし何を変数として採用するか、という経営課題を常に暖めていることが必須条件である。