大量生産大量消費という構図は決して廃れたわけではないが、一時期のように生産者が消費者ないし生活者をリードする形はややスローペースになってきた。これは、多頻度小ロット生産を可能にした技術革新の賜物でもあるが、もう一つの大きな理由は、消費者自身が自分らしさへの拘りを主張しはじめたことにもよるものと思われる。
手作りなる文言が頭に付けられている商品は多いが、これらはこうした消費者の拘りへ敬意を表したものである。言い換えれば、「この商品は機械により大量生産が可能なのですが、あなたの拘りに応えるために、敢えて手作りにしました」という生産者のメッセージなのである。
こうしてみると、一方ではコストダウンのために機械化を志向しながら、他方では、手作りの手間ひまを誇張する戦略は、結構消費者の心理を揺さぶる効果があるのかもしれない。「機械で造った手作り商品」は、元本保障の金融商品と似ているような気がする。
大量生産に馴染まない小ロット受注型の商品といえば、オーダーメードの衣料品などが典型的なものであったが、今やモジュール化が進展して、小ロットで大量生産が当たり前のこととして定着しているなど、単なる拘りは技術革新によって凌駕されてゆく運命にある。
いつの時代でも技術は必要だが、それを支持する消費者は常に学習し進化し続けている。このことに目を向けなければ、フアンは去って行きやがて市場は消滅してしまい、後には陳腐化した技術だけがむなしく残ってしまう。
中小企業は、このような消費者心理をターゲットにすることで市場に境界を設け、大量生産大量消費を得意とする企業群をブロックする戦略を目指すべきである。業態としては小ロットの受注生産型ということでは変わりはないが、市場規模が小さいことも予想せざるを得ないので、消費者心理の分析を怠ると存立基盤を失ってしまう。
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