希少性を武器に参入障壁を築き、伝統商品・サービスを掘り起こす戦略

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

この戦略は中小企業が最も得意する戦略である。というのは、自社の経営資源を綿密に分析して市場対応戦略をデザインしたというよりは、むしろ経営革新の波に一歩乗り遅れたために半ば偶発的に形成された戦略であることもあるからである。
 例えば、多様な素材が開発され、伝統産業としても生き残りが危ぶまれている畳産業などの場合、市場規模も縮小の一途を辿っているため、後継者の育成もままならない状況に追い込まれているが、伝統の職人技が健在である場合、図らずもこれが参入障壁になり、畳の注文がある企業に殺到して注文に応じきれず、うれしい悲鳴を上げている。
 この企業では、経営革新にも市場からのリタイヤにも消極的で、ただ単にグズグスしていただけなのに、「残り物に福あり」といった感じで注文が殺到し、結果的に経営革新にも取り組むことになったのである。意思決定が少しばかり早かったリタイヤ組みは、運がよかっただけだとやっかむが、当の本人に言わせれば、これも戦略のうちということになるのだろうか。
 SWOT分析では、脆弱な経営資源と市場の脅威の典型的な組み合わせであるのに、縮小した狭い市場に特化して、特定の製品を投入する形が確立されれば、立派な市場細分化戦略であり、製品差別化戦略もおまけについてきたことになる。
 この事例は偶然の賜物かもしれないが決してそうではない。充実した品揃えで絶大な人気保っている魚屋さん、個人や小グループをメイン顧客としている観光業者、シャッター通りと化した商店街にあって、いぶし銀のような存在感を誇っている中高年向きのブテックなど、他にも似たような例は結構存在する。
中小企業にとっては市場の機会は他にもあるはずだと考えれば、粘り強さも一種の経営源と位置づけるべきである。ちなみに、ここで例示した事業所に共通しているのは、自分の役割を熟知し、この理念を顧客と共有していることである。