社内にストックされている人的能力は豊富ですか

業績が悪化している企業の経営者にいわせると、「当社の社員はモラールが低く、そのことが原因で経営状態も悪化したのだ」という意味の弁明になる。これではまるで、「敗軍の将兵を語る」という構図になってしまう。
確かに現状を直視すると、そうしたコメントもあながち的外れではないが、それ以前に社員の能力が不完全燃焼である事の方が気にかかる。特にモラールの水準は人事制度や処遇面と密接にかかわっているので、人的資質のみで判断するのは片手落ちである。
 バブルの時代がそうだったように、学歴イコール人的能力といった短絡的な観念から、学卒を数多く採用することが雇用管理の定番になってしまい、自社にとっての人材とはどのような資質を持った人なのか、という基本的な議論は置き去りにされたままになっていた。
 このような雇用管理体系のままでは、個人的な資質は優れていたとしても、協働システムとしての組織を動かすための原動力にはなりにくいので、未稼働の人材力が社内にストックされることになり、付加価値生産性は低下するのは当然である。
 よき時代の名残である、「寄らしむべし、知らしむべからず」の人事体制では、折角の人材力を無駄にしてしまい、結果としてモラールが低いレベルで停滞し、やがて悪しき文化となり、組織を膠着状態にしてしまう。
 経営者はこの状態をひたすら嘆くが、経営戦略の一環としてうかつにも採用してしまった人事戦略のツケが回ってきたとは認識していない。だからこそ、「負けたのは兵隊のせいだ」と平然として言い放つのだろう。
 もちろん、成果主義人事制度を採用するなどして、すばやく対応する経営者もみうけられるが、そうした企業に共通しているのは、人的資質よりも発揮能力に重点を置いているということである。つまり、ヒトよりも先に動機づけるシステムを整備しているのである。