少子高齢化は、自社にどのような影響を与えますか

単純に少子高齢化を購買力の変化としてのみ捉えれば、若年層向けの製品の売上げは減少し、高齢者向けは増加するということになるが、社会現象としてこれを捉えれば、従来までのような商品シェアの変化とは別の課題が見えてくる。
 例えば、労働力あるいは人材という視点から見てみると、企業経営に大きな課題を突きつけている。平成18年4月より、原則として65歳までの継続雇用を義務づける法律(高年齢者雇用安定法)が施行されたが、企業の対応にはかなりの温度差があるようだ。
 政府の方針に賛同し、進んで再雇用制度を整備し、賃金水準も定年到達前と同等に保つことを盛り込んでいる企業もあるが、全体的にはこうした企業は、今のところ少数であり、人材の社外流出を防止するという点では全く不十分である。
 人材の問題は人事・労務の項に譲るとしても、全体市場に占める高齢人口の増加を、自社の経営資源と対応させて考えてみると、主力の従業員と主力の消費者が、社内に同居していることが一目瞭然である。
 労働力としてはあまり使い勝手がよくないが、人材としては不足している、また、消費者としては上のお得意様である。このような多面的な存在と企業はどう接したらよいのだろうか。その答えは経営者の人間感にあるようだ。
 再び高齢者雇用安定法の話に戻るが、定年退職者の再雇用に消極的な企業は、「高齢者を再雇用すると新卒者の採用を抑えなければならないので」などという理由を大義名分として掲げているが、自社製品に対して絶大なロイヤリティを持っている、大のお得意様である高齢者の満足度については殆どコメントしない。