市場は成長していますか、それとも成熟もしくは衰退していますか

現代企業にとって大きな悩みの一つは、市場が成熟するまでの時間があまりにも短いことであろう。しかし、全体として成熟している市場でも、戦い方によっては顧客満足を高めることで、存在感をアピールしてロイヤリティを獲得している企業もある。
 このようにみると、成熟化とか衰退といった概念もあまり意味がなくなり、むしろ、自社の存立基盤をどこに求めるか、という問題に回帰することになるから、これらを理由とする収益性の悪化はいいわけに過ぎないことになる。
 数年前に訪問したある食品製造会社では、自社のメイン製品の名前をそのまま社名にしている典型的な製造業であるが、応接室で社長と面接した際、そこにショーケースが置かれてあり、売れ筋商品が陳列されていた。
 しかし、そこには例のメイン製品は殆ど陳列されていない。不思議に思いそのことを聞いてみると、製品のライフサイクルが短絡化し、3か月も売れ続けると当社ではヒット商品と呼び、これが1年も続くと超ヒット商品と呼ぶのだという。
 そこにはしたたかな戦略が隠されていたが、それはともかく、市場の成長性とか衰退という切り口では、全く語られなかったということを強調したいのである。これは明らかにメイン製品市場が衰退したのではなく、まさしく従来のメイン製品市場の大枠ニーズをある共通の因子で括り、その市場に集中して自社の強みを投入したのである。
 つまり、前回の投稿で述べた因数分解の考えか方そのものなので、中小企業にとっては比較的取り組み易い戦略であると思われるが、何故か既存市場にしがみついて、ジリ貧に耐えている姿が目につくのが残念なことである。