市場を明確に定義づけ、境界を認識していますか

市場を定義づけることの意義は、細分化した市場と自社の製品を、マッチングさせる場合の商品コンセプトを設定することにある。したがって、定義づけの切り口は多様なものが考えられ、伝統的な既存市場にこだわる必要はない。
 従来から定番となっている、地理的セグメントや年齢、性別あるいはサラリーマンとか、特定の職業人といったサイコグラフィックなセグメントでは、経営資源の脆弱な中小企業にとっては、差別化戦略を打ち出すのは困難である。
 しかし、ジーパン市場とか、スリッパ市場などといったアイテムで、市場を設定すれば市場が小規模に定義されることになり、大量生産・大量販売を得意とする大手業者にとっては、魅力がない市場となるため、差別的で競争力のある製品を投入しづらくなる。
 このように市場細分化のメリットは、自社の得意とする技術やこだわりを、商品コンセプトに込めて情報発信できることは勿論、手作・注文生産・小ロットなどで、市場の境界を設定できることにある。
 家電製品などのシロモノ、オーディオ、情報機器などの棲み分けも、この切り口を応用したものではあるが、家電という括りが、共通の消費者を同時にターゲットとしていため、現在では、むしろ細分化した市場が合併して、大きな市場に統合されてしまった。
 中小企業が市場を細分化する場合のポイントは、因数分解の考え方が有効だと思うのである。例えば、レストランの市場細分化戦略を考えてみよう。まず「、「食事をする人」という共通因子から出発して、「和食」「洋食」「中華」に分解し、さらにこれを、「関西風」「関東風」etcという風にブレーンダウンしていく。
こうした思考を繰り返すことで、市場規模(経済規模)、アクセスの容易性、想定される競争業者の数、当店の差別的優位性などが次第に明確になり、市場戦略もより研ぎすまされたものになるから、何をなすべきか、何をしてはいけないかが明確になる。つまり、市場の境界をしっかり認識していることになる。