営業利益を獲得するためには、人件費の削減は不可欠ですか

経営改善を目指して、人件費を削減する場合もあり得ないことではないが、安易にこの道を選択すると、重要な経営資源を喪失することになり、かえって利益を失いかねないことを十分に留意しなければならない。
 従業員一人当たりの人件費を圧縮すると、従業員のモラールは確実に低下するし、従業員数を減らすと戦力を失うことになるので、いずれの場合も慎重に分析をして決定しなければならない。
 そこでまず検討しなければならないことは、従業員一人当たり売上高と付加価値生産性である。これらの数値が低い場合でも、その原因がどこにあるのかを十分分析しなければ安易に踏み切るべきではない。
 こうした場合、有力な分析方法はなんと言っても重回帰分析である。この方法は、売上高や営業利益と各費用の対応関係を明らかにするもので、これまでの分析結果では、経営者の実感とはかなりかけ離れていたことが多かった。
 つまり、営業利益を獲得するためには原価の引き下げが不可欠であるとして、原材料率の引き下げをメインに考える。次に正社員を削減してパート、アルバイトに切り替える。販売費・管理費の節約を狙って交際費や交通費、通信費などを切り詰める。
 しかし、これらの費用の節減が功を奏すのは、ほんのつかの間のことである。特に人件費の削減は、量的側面よりも質的な要素が強いことを十分に把握しないで、いわゆるリストラを実施したことにより、品質の低下ばかりではなく、企業の信用力まで低下させてしまう虞がある。