減価償却費はすべて借入金の返済原資になっていませんか

減価償却費は他の費用と同様に損金として計上されるが、支払い先がないため企業内に留保される特殊な費用である。そのため、設備投資資金の調達を借入金に頼らざるを得ない企業の場合、返済財源として減価償却費を充てることは半ば常識化している。
減価償却費は自己資金に還元されるため、これを返済財源に充てるということは、事後的ではあるが、自己資金による設備と考えて差し支えないが、借入金の減少ともに自己資金も同時に減少することになる。
会計計算上は減価償却費という形で支出されるが、実際には設備資産は現存しているので、借入金が減少した分だけ、利益償還が進行したと勘違いされがちであるが、実際には資本を減少させていることに留意すべきである。
設備資産が償却されて更新する場合に、前回と同様の価格で設備が取得できる可能性は、一般的には薄いと考えなければならないのに、自己資金は全く蓄積されていないので、増額して借り入れをおこすことになり、固定比率(設備資産が自己資本によってまかなわれる度合い)は低下することになる。
ただし、減価償却が正常に行われ、設備投資のための借入金が滞りなく返済できたのであれば、その期間に生み出した他の付加価値に対する功労も評価すべきではないか、という反論もあるかも知れない。
そうした議論も一理はあるかも知れないが、企業の経営資源を再配分するという観点からは、やはり無駄遣いであると判定せざるを得ない。つまり、借金は返せば文句がないといわんばかりの経営では、総体的にみて付加価値を高めるための投資とはいえない。