正味運転資本は経営に必要な程度確保されていますか

正味運転資本とは、流動資産から流動負債を差し引いた残額のことであるから、この額が大きければ、在庫や売掛金に投資できる幅が大きくなるので、経営の意思決定がそれだれ柔軟になるから、収益性を増加させる可能性も高くなる。
 経営基盤の脆弱な中小企業の場合、売上が低下してくると、相対的に総資本が過剰な形になり、総資本回転率は低下するが、流動資産の回転率はそれほど低下しないという現象がよく見受けられる。
 こうした場合、売上が低下したから総資本回転率が低下したのではなく、必要な運転資本が確保できなかったので、売上が低下したという因果関係になっていることが多い。つまり、資本構成のアンバランスが収益力の低下を招いたというべきである。
 正味運転資本がどの程度確保されていれば適正であるかは、業種や業態によっても異なるし、企業規模によっても異なるので、最終的な判断は個別企業にゆだねるとして、資本構成を一定水準に保つことは、環境変化への対応力を高める意味においても、不可欠でるという認識が必要である。
 経営基盤が脆弱であるがゆえに、必要な運転資本が確保できず、市場競争力が低水準のまま推移しているといった構図は、近年定着しているように見受けられるが、こうした経営環境の中でも、自助努力によって活路を見出している企業も確実に存在する。
 業種特性を主成分分析により解析してみると、流動比率の低い企業は営業利益率が低いという結果が得られることが多いように思われる。しかし、経営者は設備投資能力の脆弱さや人材不足などをその原因としてあげていることが多いが、一方では総資本回転率が低いという矛盾については言及しない。