日本的経営とは(2)

《終身雇用制》

 終身雇用制とは、派遣社員や契約社員ではなく正社員として採用された場合に、定年まで雇用関係を継続することをいう。しかし実は、日本企業での終身雇用制は雇用契約において明文化されたものではなく、経営上の大きな困難や社員の大きな不手際がない限り雇用を継続することを前提としており、「暗黙の契約」ということができる。また、日本での終身雇用制は大企業に限ったものであり、中小企業は終身雇用制でないという意見もあるが、中小企業においても採用の際に雇用の長期的継続を暗黙の前提としており、大企業と同様に終身雇用制が採られているということができる。

 近年では、採用された企業で定年まで働くのではなく、早い段階から関連会社へ出向・転籍する場合も増えており、長期間の単一企業勤続という意味での終身雇用は崩れつつあるということもできる。しかし、グループ企業や取引先等の関連企業の中で、定年まで雇用を維持しようとしている日本企業はまだまだ多く存在している。一方、欧米諸国の雇用システムは「ジョブ型」であるということができる。

 ジョブ型の欧米諸国では、まず「職(ジョブ)」があり、そこにふさわしいスキルを持つ人材の採用を行うが、日本のように暗黙的に定年まで雇用を継続するわけではなく、企業組織が求めるレベルの業務をこなせない場合は、雇用を打ち切られ解雇されることになる。また、欧米企業では基本的に同じ職業に対しては同じ賃金が支払われる「同一職業同一賃金」の考え方が一般的である。

 労働組合についても前述のとおりに日本と違って職種ごとの組合が強く、企業組織というものに拘らない「職務内容」がまずあるといものである。それは、同一職業同一賃金であるためどの会社で働いても同じであるという発想につながる。それぞれの労働者に適した「ジョブ」があり、ずっと同じ仕事を続けることになるが、同じ企業に勤め続ける必要があるわけではないため、職務内容は変動なくとも所属する企業を異動することはよくある。 

《年功制》

 年功制とは、年齢や勤続年数などの属人的要素に応じて賃金・役職が自動的に上昇する人事制度をいう。勤続年数が長くなるにつれて、組織内での地位は昇格・昇格に応じて上昇し、賃金は昇格に応じて上昇する。しかし、能力評価を含まないため、年齢や勤続年数が同じなら昇給や昇給・昇進にほとんど差がつかないところに特徴がある。これまでの日本企業においては、役職の昇進と資格昇格を年功的に運用することは、社員の活用、育成、評価・処遇等すべての人的資源管理政策の中心となっていたのである。

 一方、欧米では終身雇用制のところでも述べたとおり、担当する職務内容に応じて賃金が決まる職務給(仕事に値段が付く)が一般的である。日本のように会社に長く勤めれば賃金や地位が上昇していくというわけではなく、担当する職務内容によって給与が決まっていく。そのため人事評価としては、与えられた職務に対してどのような成果を上げたかという成果主義的な評価が中心となってくるわけである