組織文化 を生み出し維持していくための8要素(2)

⑤ エピソード・神話

 エピソードとは、過去の出来事について語り継がれたものである。例えば、創業間もないころの創業者の苦労話や組織が危機的な状況に陥った際にどのようにして難局を乗り切ったかといった話のことである。過去の出来事によって、現在の組織の在り方や組織メンバーの行動の在り方を規定しようとするものだ。また、過去の出来事のうち組織メンバーの頭の中に強固に植え付けられたものである場合、これを神話と呼ぶことがある。例えば、在職中営業トップ成績の座を一度も譲らなかった営業社員を神話化することが挙げられる。このエピソードや神話によって、組織が何に価値を置いているかを学ぶことができるのだ。

⑥ 儀式

 記事も組織の価値観を伝えるのに役立つ。日本企業の多くでは、かつてに比べ減少したとはいえ、今でも朝礼という儀式が行われている。朝礼では、社訓を唱和することに始まり、その後で上長から一日の連絡事項が伝えられる。こうした儀式を毎日繰り返すことが重要だ。繰り返されることによって価値観が強化され、一人ひとりのメンバーの中に定着していくのである。

 一般的に、一緒になって何かをするということを繰り返すことによって仲間意識が醸成される。そして仲間意識が醸成されると、同じ価値観を共有しやすくなる。儀式は、エピソードに比べて、マネジメント側の意向が明確に表現される。組織文化のベースとなる立ち居振る舞いを教えることを目的としているとも言える。

⑦ 社内用語

 ある程度歴史のある組織ではほとんど例外なく独自の言語を発明し、共有している。組織に独自の言葉を使うといことは、独自の世界観を示すことになる。このように、社内用語は組織文化を象徴するものであるということができる。一般的に隠語は仲間同士の結びつきを強める効果がある。いわゆる若者言葉は、大人の間ではほとんど理解不能であっても、使っている若者の間では通じる言葉として積極的に使われている。

 また、略語がコミュニケーションの速度を上げるのに使われることがある。典型的なものとしては、長い組織名を短縮して表現する場合がそれである。直接的に表現することがはばかる場合には、メタファーが用いられることもある。例えば、本社機能が丸の内にある場合、支店メンバーは「丸の内(本社)の指示だからやるしかない」という言い方をすることがある。社内用語を使えば使うほど、組織の凝縮性が高まっていくことになる。

⑧ 評価

 人事考課の項目に組織文化に直接的に関連する項目があると、当然ながら組織メンバーの意識や行動に影響を及ぼす。例えば、ただでさえ慎重な行動が求められる組織において、評価の仕組みが減点方式であれば、ますますリスクを取って新しいことに挑戦しようというメンバーは出てきにくいことが考えられる。逆に望ましくない組織文化を変えようとする場合には、評価制度や評価項目を変えることが有効になることもある。

 本当の意味で組織文化が身に付いているかどうかは、その組織文化を伝えるレベルにたっしているかどうかで決まっていく。組織文化を理解するだけでなく、具体化できることが一人前の組織人としての条件である。次の世代に伝えるというプロセスができてこそ、組織文化を維持することができる。組織は静的な存在ではなく動的な存在である。常に求心力を持って行動を起こさないと、組織自体が崩壊してしまう。組織文化を身につけるとは、次の世代に文化を引き継ぎ、組織を存続させ続けていくことを目的としているということができる。