これからの評価制度に必要なものは(その2)

人事評価制度は、企業にとって重要な要素です。適正な人事評価制度を導入・運用することで、業績にも、社員の活躍にも、よい影響を及ぼすことができます。だからこそ、この人事評価制度について、悩まれている経営者や人事担当の方も少なくないのではないでしょうか?「ずっと年功序列型を取り入れているものの、合わなくなってきているのではないか...」「人件費は高騰するが売り上げは上がっていない...」、もしこのような悩みを抱えている方は、人事評価制度を見直す機会かもしれません。

年功序列型ではなく、成果主義を取り入れるチャンスでもあります。成果主義は、正しく導入することで、会社や役員にとっても、大きなメリットを与えられる制度です。しかし、あやまった導入、運用をしてしまうと、思わぬ影響が起きてしまう可能性もあります。そこで、ここでは成果主義について、メリット、導入の際に注意するポイントなどを一から説明します。成果主義を正しく知ることで、評価制度について見なおす機会になれば幸いです。

(1)成果主義とは

 成果主義とは、業務の結果、プロセスについて、従業員を評価していく制度です。年齢や学歴、人付き合いなどは関係なく、仕事で成果を揚げたかどうかで、評価、給与が決まっていく仕組みです。ですから、成果が芳しくない場合、降格や減給なども発生します。成果主義と並べて話されることの多い制度に「年功序列」があります。この年功序列は、終身雇用や企業組合と併せて、「日本型雇用システム(メンバーシップ型雇用)」と呼ばれ、多くの企業で導入されてきました。高度成長期にはこの雇用システムが合理的で、機能しました。年功序列では、在籍年数や加齢に伴って、昇進昇級が決定。そのため、高い成果を出した場合でも、直接的には評価には結びつかないことが多い。

(2)結果主義との違い

 また、成果主義と似た制度として、聞く機会が多いのが、結果主義です。「成果主義と結果主義は、同じ意味ではないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、両者は違います。その違いとは、最終的な結果のみを評価対象にするか、プロセスまで含めて評価対象にするかどうか。例えば、業績があまり芳しくなかった社員がいた場合、結果主義は、最終的な結果だけを評価対象にします。そのため、当該社員の評価は高くならないことになります。

 一方で、成果主義の場合、もちろん最終的な業績は評価対象になりますが、そこに至るまでのプロセスも評価対象にします。プロセスとは、業績門票を達成するために、どのような計画を立てて、どのような業務を遂行していったのか、という部分のことです。そのため、成果主義においては、結果が芳しくなかったものの、プロセス次第では、よい評価を受けることも十分に考えられるのです。

(3)国内における成果主義の現状

 国内における成果主義の現状を把握するために、企業がどのような賃金形態を導入しているかを見てみる。厚生労働省によると、「定期昇給制度ある企業」は、85.1%に及び、大半の企業では、未だ成果に関わらず、賃金の定額支給を導入していることがわかります。また、このような現状に対して、評価制度の見直しを図る動きも、まだまだ積極的ではありません。実際に、内閣府の調査で、「多様な人材の活用のために実施していること」の質問に対して、「評価制度の見直し」と回答した企業は、23.4%に止まっているというデータもあります。日本において、成果主義ではなく、年功序列型の傾向が強いことは、私たち自身、体感する部分も強いのではないでしょうか。

(4)海外における成果主義の現状

 一方で、海外では成果主義を導入している国は少なくありません。代表的な国として、アメリカやイギリスがあげられます。アメリカやイギリスの場合、担う仕事内容が変わらない限り給与は上がりません。つまり、給与を上げるためには、希望の給与を得られるだけの職に就く必要があります。そのため、日本と比較して、短い期間で転職を繰り返し、キャリアアップ、スキルアップを図っていくことが一般的です。

実際に、平均勤続年数について、アメリカは4.2年、イギリスは7.9年になっており、これは、日本の平均勤続年数12.1年と比較しても、短いことがわかります。ちなみに、日本の平均勤続年数は、14ヵ国の中で1番高い数値です。このことからも、年数と共に自動的に給与が上がっていく傾向の強い日本と、自分で給与の上がるスキルを身につけたり、環境を求めていく必要がある、アメリカやイギリスなどの諸外国との違いが分かります。