(1)「人」ではなく「仕事」を評価する
タワーズワトソンの片桐氏によれば、欧米企業における評価制度の特徴は「人」ではなく、「仕事」を評価することだという。「be」、すなわちその人が「どのような能力や志向をもっているか」ではなく、「do」、すなわちその人が「どのようなことを成し遂げたか」を重視し、それに応じて賃金を支払うのが欧米、とりわけ米国流だ。それが英語で「Pay for Performance」、日本語で「成果主義」と呼ばれる考え方である。
日本企業にこのような考え方が馴染みにくいのは、日本では、長期雇用の習慣が根づいており、長い時間をかけてその人の能力を伸ばしていくという観点で社員を評価する文化があるためだ。ただし、欧米においても、仕事のアウトプットを厳格に査定する成果主義が、すべての社員に適用されるわけではない。「例えば、アメリカでは、マネジャークラスと現場の社員の評価基準が明確に分かれています。成果によって収入が大きく異なるのはマネジャー以上のクラスで、現場の社員には職務に応じた給料が支払われるケースがほとんどです」(片桐氏)。
(2)成果主義の対象はリーダー層のみ
その仕組みを表しているのが図2(省略)である。これはタワーズワトソンがクライアントに提供している社員評価ツールで、「GGS(グローバル・グレーディング・システム)」と呼ばれるものだ。アメリカの企業の評価システムをベースにして作られたツールである。まず、社員の職階を見ていただきたい。下段から「プロダクション、オペレーション」「ビジネスサポート」となっていて、一番上の段は「エグゼクティブ、シニアマネジメント・CEO」となっている。
片桐氏の言うマネジャークラスは、この中のマネジャー、プロフェッショナルの一部以上のことで、日本企業では課長以上ということになる。それを評価する横軸は1から25までの段階があり、大きく「職務」「技能」「専門知識」の部分で、成果主義の対象となるのが「職務」「技能」「専門知識」の部分で、成果主義の対象となるのが「リーダーシップ」以上の段階ということになる。
(3)ホワイトカラーとブルーカラーの差
大湾氏は、米国企業における評価制度の二つの基準を、ホワイトカラーとブルーカラーの差として説明する。「米国の企業は、ホワイトカラーのリーダー層とブルーカラーに期待される働き方が明確に異なります。リーダー層は、幅広い知識や視点を身につけて、経営に貢献することが求められるのに対し、ブルーカラーは特定分野の仕事を過不足なくこなすことが求められます」。
日本企業は社員をジェネラリストへと育成したがるのに対し、米国の企業の社員に専門性を求めるとよく言われるが、これは実は一面的な見方で、米国企業においても、ホワイトカラーでマネジャークラス以上のポジションまで行く人は、ほぼ例外なくジェネラリストであるという。大学在学中に多様な分野を専攻し、入社後もさまざまな部署を渡り歩き、結果、広い視野と技能を身につけた人が出世するわけだ。
日本企業と決定的に異なるのは、ジェネラルなスキルが求められるのはリーダー層のみで、しかもリーダーになることを期待される人は、かなり早い段階で選別されるという点である。この仕組みのように特定の人は昇進、昇給を目指すことができるが、多くの社員はある段階以上の出世を望むことはできない。それが米国の一般的な企業の在り方であるが、それが実現できたのも、以下に述べるような背景があったからだろう。