ここまでの第三章では、ビジネス、スポーツ、政治等の例を用いてゲーム理論の基本的なコンセプトを紹介した。以下の章でそれを発展させていくが、ここでは、すぐに参照できるように、これまで示したコンセプトについてまとめておこう。ゲームとは、戦略的駆引きの場であり、自分の選択(戦略)の結果は他人の選択と相互作用がある。ゲームにおける意思決定者はプレーヤーと呼ばれる。あるプレーヤーが利益を得れば、それと同量の損害を他のプレーヤーが被るゲームをゼロサムという。
しかし、通常は、プレーヤー間で利害が相反する部分もあれば、利害が一致する部分もあり、両者の利益になる戦略と自分だけの利益になる戦略が組み合わせてとられる。それでもゲームにおける他のプレーヤーは、一般にライバルという言葉で表現される。ゲームにおける意思決定は交互活動であったり、同時進行的であったりする。交互行動ゲームでは、直線的な思考の鎖、すなわち、こちらがこう出れば相手はこうするだろう、その場合こちらはこう対応して...という考え方をした。
こういうゲームではゲーム樹形図を書いて考えるとよい。ここで最善の選択の探し方は「ルール1:先を読んで合理的に今を推量する」ことである。同時進行ゲームでは、推理の堂々巡りが生じた。「私がこう考えたと相手は予測してこう考えるから私はそれを予測してこう考えるので相手は...」という具合だ。堂々巡りをどこかで断ち切らなくてはならない。次の一手を決めるとき、ライバルの行動を予測できなくても判断しなければならない。このようなゲームを解決するには、選択のあらゆる組み合わせ含んだ一覧票を作って次の手順で考えるのがよい。
まず、どちらに絶対優位の戦略(ライバルの選択にかかわらず、常に自分の選択肢の中で最も有利な選択)があるかどうかを見極める。そして「ルール2:絶対優位の戦略があるときはそれを使う」。自分には絶対優位の戦略がないがライバルにはある場合、ライバルがそれを用いると予測し、それに対する最善の対応を選択する。次に、もしどちらにも絶対優位の戦略がなければ、どちらかに絶対劣位の戦略(ライバルがどの選択をしても常に自らに絶対劣位の戦略(ライバルがどの選択をしても常に自分にとって最も不利な選択)があるかどうか判断する。
もしあれば「ルール3:絶対劣位の戦略を考慮からはずす」。これを連続的に行うと、ゲームの範囲が縮小するが、その過程でもし絶対優位の戦略が現れればそれを選択する。もし最後にある特殊な結果になったら、プレーヤーのとるべき選択とゲームの結果は自ずと明らかになろう。例え特赦な形となったとしても、ゲームの範囲を扱いやすいサイズに縮小したといえよう。最後に、もし絶対優位の戦略も絶対劣位の戦略もないときは、第二のステップでゲームを極力簡単にしたうえで、「ルール4:均衡点、すなわち、どちらのプレーヤーにとってもライバルの行動に対し最善の行動となるような戦略のペアを探す」。
このような均衡点が一つであれば、両者がそれを選択することになる。このような均衡点が複数あれば、常識的なルールあるいは習慣によって一つに絞る必要がある。そのような均衡点が一つもなければ、ミックス戦略が必要となってくる。実際には、ゲームには交互行動的部分と同時進行的部分両面があるものもあり、その場合には、上述のテクニックを組み合わせて使わなければならない。