男性営業マンのアプローチ

 男性の顧客に「力を誇示」させるべくアピールしようとするのは営業ウーマンだけではない。ときおり、いかがわしい株のディラー(一般的には男性)からセールスの電話を受けることがあるが、彼らはその場で株を売り込もうとしたり、せめて日を改めて話を聞いてもらう約束を取りつけようとしたりする。この手の男たちを黙らせるのはかなり難しい。

最後の手段は電話を切るしかない。こちらが話を終わらせようとして何かを言えば、さらに矢継ぎ早の質問が返ってくる。例えば、「5000ドルの投資ができないとおっしゃるんですか?」。軽蔑的な口調に、顧客の権威、財力、最終的には男らしさに疑問を呈しようとする意図があるのは明らかだ。彼らにとって望ましい反応は、この場合もクジャクの誇示行動であり、おそらくこんな返答だろう。

「もちろんできる!私はいつも、もっと大きな投資をしているんだ!」。望みどおりの返事が得られたところで営業マンは軌道を戻し、セールストークを再開する。こうした手法も、ロンクチックなプライミングではないかもしれないけれど、同じような効果を生む。クジャクに言わせれば、こう尋ねているようなものだ。「おまえには尾羽がないのか?」。

 女性の方が優秀な営業マンになれる理由を取り上げた本も出ているくらいなら、雇用、残留、昇進を決める過程で差別が生じるのではないかと思う人もいるだろう。だが、販売という職業でものを言うのは結果である。無能な営業マンを雇い続ける会社は殆んどないし、多くの会社は販売実績に基づき、個々の営業マンに与える報酬の大部分を決めている。

 理論上、このようにして営業マンの地位を決めれば、主観的に評価する場合よりは性別による差別が生じにくくなるはずだ。やはり、顧客の求めているのは、結局のところ、自分たちの問題を解決し、利便性を提供してくれる営業マンなのだ。外見や性別による要因は、真の解決策に比べたら重要性は下がるだろう。こうした考え方は概ね浸透している。

 殆んどの場合、ロマンチックなプライミングの効果は二次的なものかもしれないが、販売プロセスに影響を与えることもある。この程度の小さな利点でも活用しようとするなら、営業マン(男性)は顧客の有する権限や財力にさりげなく訴える手法を取るべきだ。多くの場合、「こんな車を買う余裕はないとおっしゃるんですか?」といった攻撃的なアプローチはすべきではない。

 それよりも「お客様ならこの車のお支払いは苦にならないですよね?」など、控えめなアプローチを取った方が、顧客に美しい尾羽を見せびらかすチャンスを与えることになる。「では、契約書にお客様のサインをお願いできますか?」といったシンプルな質問でも同じようなチャンスを与えられるだろう。財力や意思決定能力を誇示したい気持ちと、契約書に署名するといった具体的行動とを結びつけることが、プライミング効果を成功へと導く最終要素となるのだ。