印刷の印象があまり強くて、実際にはありもしないモノを試食したという虚偽記憶をつくり出してしまうことがあるという。プリヤリ・ラジャコパル(サン・メソジスト大学)とニコル・モントゴメリー(ウイリアム・アンド・メアリー大学)の研究チームは、被験者に「オーヴィㇽ・レデンパッカー・グルメ・フレッシュ」という実在しないポップコーン製品の印刷広告を見せる実験をした。
あるグループは、高解像度の広告画像を見せられ試食はなし。その対照群は、低解像度の画像を見せられ試食はなし。そして3番目のグループは、同社の別のポップコーンを新製品だと告げられ試食を許された。1週間後、すべての被験者の製品に対する感想とその確信度を調べたところ、鮮明な方の画像を見たグループは、実際に食べたグループと同じ割合で試食したと答えたという。
低解像度の画像を見たグループは、試食したと答える割合は低く、製品に対する評価も低かった。ブランド名を「ポップ・ジョィズ・グルメ・フレッシュ」という無名なものに変えて同様の実験を行うと、虚偽記憶の効果は減少した。この研究の成果の要点は、鮮明な画像を使った印刷広告(紙媒体の広告)がどれほど強い印象を残すかということである。
印刷広告は2次元の静止画像ではあるが、製品を実際に試したような印象を消費者の脳に残し、製品に対する肯定的な意識を高める。つまり、この研究は、時間を費やして高品質な画像をつくり出す価値があることを示唆している。例えば、食品広告の場合、見栄えのするおいしそうなクローズアップ写真をのせることで、製品の味覚や嗅覚まで刺激する。
それ以外の製品では、触覚や嗅覚といった感覚に訴える要素を強調するような画像にする。手触りやにおいを感じるのは、人の心の中だが、それが自然である。われわれは世界を色つきで見ているわけであるから、やはり白黒よりもカラー写真の方が製品を試したかのような現実感が高まるであろう。これらの研究成果は、高品質で現実味あふれる鮮明な広告画像を掲載できる雑誌社にとって有利にはたらく。
近年は、食品や自動車といった有形の商品だけではなく、旅行や保険のようなサービス商品にも、臨場感のある高解像度の画像の印刷媒体が多用されている。これらのサービスはにおいや味もなければ触れることもできない。しかし、優れた品質であることを消費者に感じさせる大きな威力を持っている。これもやはり印刷媒体の強みであるといえよう。