役員報酬の決め方

 企業業績が安定してくると、各セクションが専門化し始めてくるため、部門の目標と企業全体の目標に乖離が生じてくる。その分、総合調整役としてのマネジメントのリーダーシップが問われることになるが、これを担う担当役員の報酬をどのように決めるべきかという問題も浮上してくる。この決め方には、これといった一定の方式があるわけではない。

 中小企業の場合は、大きく分けて2つのタイプがあるように思われる。一つは、まず役員報酬ありきで、理想的な業績水準を想定してこれをもとに役員報酬を決定する。業績が想定を下回り資金繰りが悪化した場合は、報酬を引き下げるか、あるいは役員借入という形で会社に資金を留保させる。この方法は合理的な面もあるがやはり乱暴な決め方である。

 もう一つは、役員報酬を一般社員より多少高めに設定して、業績がよかった場合に役員賞与として上乗せするというタイプである。この場合は「役員も我慢しているのだから、社員も少し我慢してくれ」というメッセージとしては役立つが、見方によっては、マネジメント能力が欠如していることの裏返しであり、やはり適正な決定方法とはいいがたい。

 どちらのタイプにも共通しているのは、業績は市場の動向次第で変化するので、役員報酬が変動するのは仕方がないと考えている点である。もちろん、最終的に責任を取るという意味では当然かもしれないが、投下した資本を回収し、企業の維持発展に必要な利益を生み出すという使命を背負っているという意識が欠如しているところが根本的問題である。

 自分が手掛けている仕事を確認して、それを細かく業務別に分類し、その仕事を他の人に担ってもらうとしたら、どれくらいの報酬を払うべきか見積ってみる必要がある。つまり、それは一定水準の業績(目標)を達成することを約束するという条件のもとで決めるべきである。その内容には基本給、職能給的要素などが含まれていることが原則である。

 人は報酬のみによって動機づけられるものではないが、仕事の出来栄えを正当に評価するには報酬が最適である。このことに対して共通認識を持っているため、昇給額の差をその経済的価値よりも拘りを持つのである。逆に言うと、「人並の給料をもらっている人間は、人並み以上の仕事をしない」ということになる。役員報酬を決めるには遠慮はいらない。