なお、Ackoffたちは、この動機分類を用いて興味深い実験を行っている。まず、被験者に対してパーソナリティテストを受けさせそれぞれの4つの動機のうちどれが該当するかを探った。次に、4種類のビールブランドについてそれぞれ一つ合計4種類のテレビコマーシャルを被験者は見せられたが、それぞれのコマーシャルは3つの要素からできている。
1)4つのタイプのうちの一つを登場人物に仕立て、2)その登場人物がビールを飲む、3)登場人物が再び登場し、その動機に沿ったパフォーマンスを行う(例えば、外向型ドリンカーは楽しく騒ぐ)。被験者は、次に4つのブランドのうちどれを欲しいかを聞かれた。被験者たちは自分の動機に近い広告のブランドを選択する傾向があったということである。
4種類のビールは実際すべて同じものであったが、被験者たちはそこに違いがあると信じていた。つまり、動機に基づいた広告訴求によって異なった好みが生まれただけでなく、知覚上の差異も生じたのである。タバコの喫煙の動機については、次の3つの「効果」としてまとめられている(これらの効果が場合によってプラスにもマイナスにも評価される)。
1)薬理効果(ニコチンがノルアドレナリンとドーパミンの分泌に影響し、セロトニン系を刺激する)、2)心理的効果(快楽、刺激、寛ぎの感情、個人の表出)、3)社会的効果(社会環境によって受容あるいは排除の形を取る)。これらの3つ「効果」が特定の状況において喫煙するかどうかに関わってくる。このとき喫煙者は費用対利益のバランスを考えて喫煙を決定する。
佐々木土師二氏は「旅行者行動心理学」の心理研究において、旅行の動機づけの実質的内容(特性)を階層的に捉えようとして、旅行者のモチベーションの「内容」(content=旅行動機の基礎にあたる動機の性質)を次の5次元を提案している。1)緊張解消行動、2)娯楽追求行動、3)関係強化行動(家族の繋がり強化など)、4)知識増進行動、5)自己拡張行動(自己発見や自己評価に繋がる)、である。
また、旅行者行動の上記旅行動機の内容を方向づける「機能」として、「新奇性」、類似の概念として「逃避」、「希求」の重要性さを強調している。つまり、上記の動機の「内容」が「機能」によって旅行行動として発現することになる。例えば、新奇性動機が弱ければ、「補完」機能つまり、日常的な生活に欠けている経験を実現しようとして、そのような旅行経験を求める行動に出るだろうし、新奇性動機が強ければ「創観」機能すなわち旅行を通して新しい人生観を希求するような旅行者が生まれることになる。
このように具体的商品について、その動機づけを分類し、分析することによってマーケティング戦略としての重要なインプリケーションが得られるだけでなく、消費者行動一般にとっても有用な発見が得られることが期待できる。