しかし、新しく打ち出されたビジョンは、既存の組織に対してダメージを与えるものであると考える抵抗勢力にとっては、長年にわたって積み上げてきたキャリアがゼロにリセットされてしまう虞を感じてしまえば、これまで曲りなりに保たれてきた組織の利益と個人の利益という同方向のベクトルが完全に逆の方向に向いてしまうことにもなりかねない。
変革チームは、トップの肝いりで結成されたという大義名分を背景に、抵抗勢力とのコミュニケーションをどうしても端折ってしまう場合が多い。中小企業では、こうした初期対応のまずさが、決定的な溝に発展し、抵抗勢力に属するものの退職という結末を迎えてしまうえこともある。その場合の後遺症は予想を遥かに上回るダメージを組織に与える。
したがって、総論的には異を唱えようがないビジョンを掲げたとしても、説明会や社内報への掲載といった形式的なものでは、到底伝わらないものであることを認識して取り組まなければならない。具体的には、なんといってもトップの篤い思いをあらゆるチャンスを活用して、双方向のコミュニケーションを密にし、粘り強く情報を発信することである。
ここでいう十分なコミュニケーションとは、変革チームが評価するのではなく、抵抗勢力はもちろん、全てのメンバーが納得したかどうかで判断すべきであるということである。ここが不十分だと、組織変革に失敗することになるばかりか、組織は硬直化していまい、フォロワー同士の協働関係もギクシャクするようになり、組織の成長力も減退してしまう。
説得は妥協点を引き出すことは出来るが、あくまでも足して二で割る解決策以上のものは期待できない。抵抗勢力が出現するのも、元はといえば立場の違いからくるものであり、その違いを埋めるのは、情報を共有するしかない。トップと組織内ワーカーとでは、情報の質量の差は歴然としている。ここを無視して説得に走ってしまっては理解が得られない。