全体から部分へ

 データツリーは、問題や課題を中核に据えて、それを構成している要素を分解していく構造になっている。つまり、これはロジックツリーそのものであるから、分解された最終要素について分析した結果と、全体の整合性が保たれていなければ、どこかに分析のモレが生じていることになる。こうしたことが起これば、ツリーを再点検しなければならない。

 データ分析で気を付けなければならないことの一つは、最初から細かい部分にのめりこみ、全体を見失ってしまわないようにすることである。例えば、よくやってしまうミスに算出された数値の単位を間違えてしまうことがある。この場合は、分解された要素を逆にたどると、全体と矛盾することに気づくが、逆にたどるのは分析が中断され非効率である。

 木を見て森を見ないとはこのことで、全体像を頭に置きながら部分に迫っていくことが分析のセオリーである。単純な計算ミスの場合でも、全体を見失ってしまうこともあるとすれば、全体の市場規模と、分析しようとしている商品アイテムの売り上げとの整合性が失われてしまえば、分析結果は全く無用の長物となり、分析作業は徒労に帰してしまう。

 全体から部分へということは、全体を部分に切り分けるということに他ならないが、その場合に問題になるのは全体をどのように定義するかということが前提である。自社の売り上げが減少傾向にあるとき、多くの経営者は、同業他社の情報収集に走り、他社も減少しているという結果を得ると、自社だけではないということで、ある種の安堵感をもつ。

 しかし、自社が競合他社と定義している企業だけが、自社と同様の商品を取り扱っているとは限らない。こうした場合は、全体の販売額は増加しているのに、自社の売上が減少していることを見ようとしていない。こうした場合、市場全体を大きく捉え、まず、販売チャネルで分解し、さらにこれを細分化するというものでなければ、モレが生じてしまう。

 こうしたモレを防止するためには、定量的データだけではなく、定性的なデータも組み合わせて分析する必要がある。すなわち、定量的データを分析することにより、抽出された結論は、次のアクションを決める仮説の根拠になるわけであるから、既に文字や言語によって表現された定性的データに転換されており、これが次のステップの踏み台になる。