業態転換の可能性模索

 

 費用構造の見直しによりコストの引き下げを実現し、価格競争に耐えうる体力を養うことは必要最小限度のことであり、同業他社も遅かれ早かれ追従してくることになる。しかし、そうした伝統的な試みとは一線を画すものとして、既存のビジネスの根幹をネットで代替させるという動きは、小売、保険、証券、旅行など様々な業種で進化を遂げている。

 特に革新的な業態転換を遂げたものとしては生命保険である。生命保険業界では、多数の保険外交員を抱えているため、人件費が営業コストの大部分を占めているが、そのコストは保険契約を獲得するためには不可欠なものであるという考え方に立っていた。しかし、そのコストを負担していたのは当然保険契約者であり、構造的ジレンマが存在していた。

 ここに着目した新しい業態である。つまり、営業員などの人件費が大部分を占める付加保険料を、インターネット販売に切り替えることで大幅に削減することができると考えたわけである。保険金の支払いに充てる部分である純保険料は、平均死亡率などにより算出されるので、原則として他社とは変わりないが、当時としては大胆な発想転換であった。

 経営改革によるコスト構造の見直しの場合は、業態転換に至ることはないかも知れないが、顧客の価値基準や優先順位の変化に対応し、しかも、他社の追従を許さないという点で、戦略コントロールを優位に保つだけの価値があり、それは、とりもなおさず顧客に対する価値の提案にもなり、新しい市場を開拓するという戦略にも繋がっているわけである。

 また、特にインターネットとは関係のない、理髪店のQBハウスの戦略は、顧客の不満解消とコストの削減を一緒に実現した点が特筆すべきところである。同店の場合は、ブルーオーシャン戦略のERRCを活用している。発想そのものは至ってシンプルではあるが、理髪店という旧来の枠組みに大きな風穴を開けた点で、消費者から高い評価を得ている。

 こうした発想は、「コロンブスの卵」のようなもので、特別な才能が必要なものではなく、顧客の側から見た付加価値を起点に革新的思考で迫っているところにある。「価格を下げなければ売れない」という切実な思いは理解できるが、旧来の業界枠組みにしがみつき、改善をその都度行うという対応では、業態転換に至るビジネスモデルは生まれそうにない。