費用構造の見直し

 

 費用の構造を分解すると変動費と固定費に分けられる。変動費は売上高の変動に連動して変化する費用で、原材料費、製品製造のために投入された人件費その他のコスト、仕入原価などがこれにあたる。一方の固定費は、一会計年度内に支出した変動費以外の費用で、人件費、減価償却費、交際費、交通費、広告宣伝費その他の販売・管理費がこれにあたる。

 変動費に当たる原価の引き下げについては、すでに言及しているので、ここではもっぱら固定費の見直しについて考えてみたい。固定費というと、売り上げの変動には関係なく発生する期間原価という固定観念があるようだが、確かに、税務会計ないし財務会計上はこれに従わざるを得ないが、少なくても原価管理の立場からは望ましい考え方ではない。

 企業が業績を積み重ね成長していくにつれ、このような概念による固定費はどんどん積み上がっていく。それが本来の固定費であるとすれば、これを引き下げるための方策は極限られたものになる。そうした取り組みの一つが、人件費や人員の削減、交際費、交通費、広告宣伝費、消耗品費その他の節約ということにならざるを得ないが、それは危険である。

 このシリーズの冒頭で述べたように、売上高と費用項目の相関関係を調べてみると、本当にこの費用が固定費なのかと疑いたくなる費用があるが、会計制度上は期間原価に位置づけられているものがある。もちろん、相関係数はそれほど高くはないが、中長期的なトレンドでみると、明らかに売上高と何らかの相関が認められるものもあることに気がつく。

 費用対効果という視点で、売上高を増加させる関係式(重回帰式)を作ってみると、その費用の増減が売り上げに反映される構造になっている場合でも、これに目を向けず、人件費など金額の大きい費用から順次削減するという方法で、固定費の見直しを行っている。その結果、変動費として扱うべきものまで一律に削減してしまい、売り上げも減少する。

 固定費を見直す第一のポイントは、「固定費の変動費化」である。このことに気づいた多くの企業は、人件費を変動費化することを目指し、パートや派遣社員などの非正規社員を増やすことになったが、ビックデータの活用が叫ばれる時代、あまりにもアナログ的な発想であるといわざるを得ない。その発想のツケを消費者に転嫁するのでは競争に勝てない。