弱みを強みに変えた戦略転換

 

 かなり以前の話であるが、ある食品メーカーが取った奇抜な販売促進策が巷で噂になったことがある。それは、自社製品を中小のスーパーで取り扱ってもらうために取った苦肉の策であった。店のあるエリアから離れた地域に住んでいる主婦をアルバイトで雇い、バスに乗せてターゲットのスーパーに向い、その近所で降車させ普段着のままで入店させる。

 アルバイトの主婦達は、買い物客として振る舞いながら、さりげなく自社製品を探すふりをし、最後に「その商品は扱っていないの」と尋ねるである。この動作を店員に気取られぬよう役者を替えて繰り返すわけである。その効果はてき面で、店側としては売れ筋商品がラインからはずれていることに危機感を持ち、早速その食品メーカーと仕入交渉する。

 嘘みたいな本当の話であるが、指名買いの構図を意識的に作り上げているという点ではなかなかのものである。もちろん、道義的な観点からいっても、あまりほめられたものではないが、その後、その地域のスーパーでは、軒並みその商品が扱われることになったという現実を見ると、食品メーカーにもスーパーにもメリットがあったものと推察される。

 また、これは最近の話だが、需要の落ち込みが一段落したとはいえ、廃業を余儀なくされている企業が多い畳産業において、起死回生のホームランを放った会社がある。そのやり方は、居酒屋など営業時間が長い業種をターゲットとして、深夜の短い閉店時間内に、畳の表替えや修理を行うことにしたところ、同業種からの注文が殺到するようになった。

 理髪店のカットハウスの戦略も、こうした発想が原点にあるものと思われるが、いずれの場合も、視点や発想をかえて、「弱み」を「強み」に変換しているところが新しい。直接的な顧客に焦点を合わせるかどうかということより、「取り除く」「減らす」「増やす」「付け加える」などのブルーオーシャン戦略のERRCグリットの考え方が基本になっている。

 すなわち、自社の強みは何かを探すよりも、「知名度が低い」「労働集約的である」「経営資源が乏しい」といった弱みを、発想を変えることによって、強みとして活用できるシステムを構築することである。弱みを組み合わせることで構築されたシステムは、リーダー企業のアケレス腱を狙うことにもなるから、大きな戦略コントロール要因にもなり得る。