得意技を活かした業態転換

 

 ある中小の薬品メーカーは、総体的に経営資源が乏しいため、製品の売り込みには大変な苦労があった。製品の品質は中程度で価格もほぼ妥当なものであったが、大手メーカーの競合する商品については、毎回苦戦を強いられていたため、本来の業務ではないが、顧客の求めに応じて成分検査を引き受けることで、何とか存在感を維持している状態だった。

 このように、顧客に弱みを握られていた形になっていたので、他社製品の成分検査業務が増加したため、社内的に検討した結果、いっそのこと、検査業務を主体としたサービス業に転換してはどうかということになり、これまで無償であった検査を有料にした。もともと検査技術には定評があったため、顧客からはその業態転換はすんなり受け入れられた。

 会社としては、恐る恐るの結論だったこともあり、薬品製造を全く廃止するという方針ではなかったが、この業態転換のおかげで製品の売り上げも増加することとなった。業態転換といっても、これまで主にしてきた製品製造業務とサービスとして提供してきた検査業務のウエイトを変え、かつサービスを有料にしたものであるが、業績は急激に改善した。

 サービスは行動に直結することが多く、その行動の源泉は情報である。ある中小の部品メーカーが自社製品を売り込みに行くとき、その会社の顧客の情報を事前に収集して提供するという戦術をとっている。例えば、10社程度の顧客に対してアンケートをとり、あたかもプレマーケティングを実施したかのような情報を提供し、自社の存在感を植え付ける。

 こうした行為自体は、直接的な販売促進ではないが、顧客が最も知りたがっている情報である本音を知ることができるので、取引したいと考えてアタックしている会社にとって自社の存在感を強力にアピールすることができる。この段階では、一つの戦術の域を出ないかもしれないが、かなり応用範囲の広い戦略的思考に育て上げる価値があると思われる。 

 いずれのケースの場合も、自社あるいは営業員のコアとなる経営資源や能力をしっかりと認識していたことが成功に繋がっているものと思われる。こうしたいわゆる弱者の戦略が奏功することは少ないかも知れないが、中小企業でも例のないことではない。要は、自社・自分らしさを客観的に分析しておくことが、戦略のテコになり得るということである。