ネスプレッソの成功モデル(その2)

 

 ネスプレッソの富裕層への直接販売と、ネスカフェのマス市場に対する間接販売という2つのアプローチは、フォーカスが異なっているおかげで、直接利益を奪いあう危険性はない。ということは同時に両事業間の相乗効果も殆ど期待できないことも意味している。ネスプレッソが成功するまで、ネスレのコーヒー事業はかなりの時間とリソースを失うことになった。

それがネスカェとネスプレッソの間の対立を引き起こした。組織的に分けることで、厳しい状況においてもプロジェクトが中止されないようにしていたのである。さらに、2004年、ネスレはまた、エスプレッソ専用のネスプレッソ機器を補完する、カプチーノやラテも作ることができる新しいシステム導入を目指したが、大きな問題が立ちはだかっていた。

その問題とは、このビジネスモデルとシステムをどのブランドでたちあげるべきか、ネスプレッソ同様、別会社にすべきか、ということである。技術は、もともとネスプレッソで開発されたものであったが、カプチーノやラテは、中間層、マス市場の方が適切だった。ネスレは最終的に、新ブランド、ネスカフェ・ドルチェグストを立ち上げることに決めた。

しかし、これは、ネスカフェのマス市場向けのビジネスモデルおよび組織構造に、完全に統合されるものとなった。ドルチェグストのポッドは、ネスカフェのインスタントコーヒーと一緒に小売店の棚に並んでいるだけでなく、ネスプレッソのオンラインでの成功を踏まえ、インターネット経由でも販売された。これは、基本モデルの組み合わせである。

すなわち、ネスカフェによる巨大なインスタントコーヒー市場を小売りモデルにより支配し、次に、専用カプセル式の一杯抽出型エスプレッソマシンの導入による「消耗品モデル」を展開することで、これらの直接的な相乗効果はないものの、結果的に、ハイエンドにはネスプレッソ、ミドル層にはドルチェグスト、マス市場にはネスカフェで囲い込んだ。

さらに、このモデルは進化し、ネスレ日本の「ネスカフェアンバサダー」のような独特のシステムを開発している。これらは、決して各事業を単独のマーケティングで攻めるのではなく、一種のビラミットモデルないしは、バースディ・ケーキ型を目指しているともいえる。これらのモデルを巧みに組み合わせることで、安定した収益源を確保している。