クロスセルの促進

 新規顧客の獲得の難しさは、多くの営業マンが実感していることであるが、それにもましてコストが5倍もかかると言われるほど非効率である。しかし、新規顧客獲得活動は必要であり、これを怠ると顧客の総数が減少してしまうという現実も認めざるを得ない。営業マンの目標管理の難しさはここにあるわけであり、何らかの工夫が求められている。
 この悩みを解消する特効薬というものはもちろんないが、企業あるいは営業マンの取組姿勢として2つの方向に分かれているように思われる。一つは、既存の顧客の離脱を防止しながら、新規顧客獲得を目指すという伝統的な手法であり、もう一つは、CRMを実践することで、顧客の属性を把握しながら新規顧客に繋げていくやり方である。
 中小企業の営業会議でよく見かけるのは前者のタイプで、訪問回数と新規顧客獲得率の関係を強調した指針に基づき、営業マンの行動規範としているが、顧客情報の収集や分析を殆ど系統的に行っておらず、人的販売促進に期待している。そのため、断片的な情報は入手できるとしても、顧客の問題解決を意識したアプローチにはなっていない。
 一方後者のタイプは、既存顧客の深耕を目指して並売分析を徹底して行い、そこから得られたデータを加工し、問題解決に繋げる情報に仕上げていく。ここでまず注目する情報は、顧客のタイプを分類して、その顧客のプロフィールにマッチした並売商品をリストアップする。いわゆる顧客セグメントを確実に行うということである。
 並売分析の基本は、まず顧客の購買傾向を把握し、顧客の購買行動や購買態度別に分類した顧客群を割り出し、これらに対して仮説と試行を繰り返し行っていくことである。こうしたアプローチは、顧客セグメントを識別することになるから、こうして明らかになった顧客セグメントとそれに伴うアソシエーションルールを導出する。
 こうした分析がデータマイニングであり、有名な男性顧客のビールと紙オムツの関係などもこうした分析の結果から導き出されたものである。こうした傾向が掴めれば、同じセグメントに属していながら、まだ購買行動を起こしていない顧客に対して、購買パターンに表れている順番に商品を推奨していくという並売促進につなげていく。