上司や得意先に対して相談や商談をもちかける場合、自分がどれだけ相手の立場を理解しながら臨んでいるかが、実のある内容になるかどうかの境目となる。そのときのコミュニケーションとして有効なのが複数の代替案を用意しておくことである。つまり、問題の中核をしっかりと捉えた上で、解決策を複数提示するという方法である。
そうすることで相手は、まず仮説を立てある程度検証サイクルを回して臨んでいるということに、ある種の敬意を示すことにもなるからである。こうした対応をすることにより、相手も今まで気がつかなかった仮説も新たに立てられる可能性が高まるし、事前に用意しておいた仮説を密かに改定するきっかけになることもある。
営業マンが得意先に対して提案型の営業を仕掛けるのも、一種の仮説思考によるもので、課題解決の糸口を見つけ出すことにも有効に作用する。ダメな営業マンはプッシュ戦術一本やりで、提案型になっていないため、相手の潜在的な問題意識を覚醒させることができないので、具体的に解決すべき問題に意識を高めることができない。
販売員ないし御用聞き型の営業では、相手から課題解決の手段について相談をもちかけられてから、ようやく仮説思考を働かせるので、既に提案型の営業を続けている営業マンとの差は歴然としたものになる。つまり、スタート時点から大きなハンディを背負っていることになるので、仮説の精度にも雲泥の差がついていても不思議がないからである。
金融機関などに協力を求める場合でも、複数の代替案を用意して臨めば、それぞれの案について仮説検証サイクルを回すことができるので、更なる絞り込みがしやすくなる。つまり、どの案を採用した場合にどのような結果が期待できるかが、仮説思考で検証できることになるわけである。ものごとを交渉する時の極意はここにある。
到達点のイメージにリアリティがあれば、日常の業務に忙殺されている中での意思決定には、かなり追い風になる可能性が高いと考えられるから、問題が解決することにより望ましい状態もある種の仮説として立てやすくなる。これが意思決定を促す最大の動機に繋がる。仮説思考の効用は、相手の仮説検証サイクルを回すことにも寄与することにもある。
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