仮説思考を育てる土壌

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 多くの企業で見られる典型的な光景だが、全てを部下に丸投げしてしまい、部下に考える糸口を与えないことがよくある。例えば、「売上が低下しているので何とかしろ]などというのがその典型で、こうした上司の投げかけに応えようとする部下は、どのように行動して売上を伸ばすのか全く見当がつかないという嘆きが聞こえてくるようだ。
 上司にしてみれば、プロである営業マンである以上、そんなことは自分で考えろということかもしれないが、それが本音であるとしたら、部下がもともと抱えている悩みをより深いものにするだけの効果しか期待できない。つまり、「それができるくらいなら、上司からハッパをかけられることもないのに」と思うはずである。
 単なる意地悪質問であれば別だが、会社の一大事として売上を伸ばそうというのなら、こうした嫌がらせに等しい命令を下すべきではない。少なくとも、部下が取り組みやく、ある仮説が頭に浮かぶような切り口を提示しなければならない。例えば、「顧客数が減少している原因を調べてみるように」という具体性のある指示である。
 そうした課題が提示されれば、いやがおうでも「顧客志向の変化」や「人口動態の変化」などについて仮説を立てることができ、それを実査することで仮説の検証ができるので、精度の高い新たな仮説に育て上げる可能性も高まるはずだ。こうして仮説検証サイクルが回り始めれば、売上が低下している本当の原因も特定できることになる。
 部下の能力不足を問題にする前に、何が目的で何が問題なのかを明示しなければ、仮説を立てる拠り所が見つけられない部下は、ただ右往左往するばかりである。このような日常の対話が部下の仮説思考を育てる土壌となることは間違いない。逆にいうと、そうした配慮に欠けた上司のもとでは部下の仮説思考は育たない。
 部下自身が根っからの怠慢である場合は別として、上司の投げかけに応えられないことは残念なはずであるが、もっと残念なことは、真摯に取り組んだことを評価してもらえないことがもっと残念である。こうした取り合わせは、企業全体として不幸な結果を招くことは明らかであり、自分自身のキャリア形成にもマイナスに作用することになる。