キャッシュフロー計算書と損益計算書、貸借対照表

 損益計算書の営業利益とキャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフロー計算書はほぼ一致していると考えられる。違う点は役員賞与金の支払いが、キャッシュフロー計算書では、営業活動によるキャッシュフローに入るということである。役員賞与金は損益計算書には関係なく、利益処分計算書に含まれる。
 したがって、厳密にいえばこれを調整しなければならないが、損益計算書をそのままにする場合は、キャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローの小計に役員賞与金の支払いを加えた金額を損益計算書の営業利益と比較すると、営業利益に対応する現金預金等の流れが把握できるが、役員賞与金が大きくなければ影響は少ないと思われる。
 次に、損益計算書の当期純利益とキャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローとの関係であるが、当期純利益の計算に含まれている有価証券売却益、投資有価証券売却益、固定資産売却益の入金が投資活動によるキャッシュフローに含まれているため、上記の役員賞与金の支払額も調整しなければならない。
 しかし、前述のように、これらの金額が小さかった場合には、これを無視して営業活動によるキャッシュフローをそのまま当期純利益に対応するキャッシュフローと考えても差支えない。なお、有価証券売却益、投資有価証券売却益、固定資産売却益の入金が捉えられない場合は、損益計算書の有価証券売却益、投資有価証券売却益、固定資産売却益をそのまま使ってもよい。
 また、貸借対照表とキャッシュフロー計算書の関係については、通常貸借対照表では、現金預金と表示されるので、キャッシュフロー計算書の現金及び現金同等物の期末残高とは一致しないことが多い。これを一致させることによって貸借対照表とキャッシュフロー計算書の繋がりが明らかになり、現金及び現金同等物の増減が信頼されるものとなる。
 このように、キャッシュフロー計算書は、貸借対照表の現金預金等の1年間の増減を原因別に捉える計算書であることがわかる。つまり、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の関係は、発生主義と実現主義の双方に現金主義という概念を加えて、経営活動の実態を把握する仕組みであると解釈される。