事業戦略の明確化

 事業戦略が明文化されているかどうかは別として、長中期的に到達すべき目標があり、これを達成するための計画は存在するはずであるし、この短期目標である単年度計画(予算)も存在するので、事業のミッション、ビジョン、バリューと一体となった形で戦略テーマと重要成功要因を抽出するという全体像について述べてきた。
 バランス・スコアカードとは、ここで設定された戦略を推進する手法であるから、その上位概念である事業体のミッションが明確になっていることが必須の要件である。ミッションマネジメントの体系により、対象部門の事業戦略、事業経営方針と戦略テーマを明らかにするということは、対象事業が市場で勝ち残るための戦略を定義することである。
 中長期的な時間軸でその事業体が掲げる主要戦略テーマを確認し、そのテーマがどういった市場分析、自社分析の結果抽出されたのか、つまり、差別化要因(戦略)をどう定義したのか明らかにしていく。ここを固めることによって、その戦略を遂行するためにより具体的な方針へと落とし込んでいく過程で、遂行状況を図る目標を掲げていく。
 その目標を4つの視点からバランスよく配置することで戦略体系に即したバランス・スコアカードを作ることができる。戦略と目標およびそれを測る指標がバラバラに設定されていたのではバランス・スコアカード本来の目的は達せられないから、ミッションマネジメントの体系の中にバランス・スコアカードを構築することで戦略との一貫性が保たれる。
 戦略を洗い出し、戦略マップにまとめるためには「戦略テーマ」という形で整理するとともに、視点を定義しておかなければならないが、事業戦略の表現方法が各社一様ではないこともあり、そうした場合には既存の中期経営計画を活用し、これを戦略テーマとして設定し、バランス・スコアカードによる戦略的経営の枠組みによって整理される。
 戦略テーマは単なるスローガンではなく、財務的戦略テーマに至る筋道を明らかにすることがバランス・スコアカードの主たる目的であるから、戦略テーマも視点ごとに設定されなければならない。例えば、事業戦略テーマは、重要成功要因に対応する形でテーマを列挙し、次に重点方針に分解する。そして分解したレベル単位で視点別に振り分ける。