キャリアを望ましい形に形成するということは、単に自分のこだわりに沿ったものであれば足りるわけではない。それは、企業や社会にとって有用であることが前提であるから、狭義には、企業の経営戦略に沿ってデザインされ、これに個人の意欲や動機が加味されて発展を遂げる。少なくとも初期の段階ではそこが基盤となるであろう。
そこで、企業戦略の構成要素と個人のキャリア・デザインとの対応関係から見てみるとどのようなことがいえるのか見てみよう。まず、事業活動の領域(ドメイン)を考えてみると、企業が他社に対してもっている差別的優位性を明確にすることがドメインであるから、個人のキャリアもこれ沿ってデザインされることになるはずである。
次に、競争の優位性を支える独自能力(コア・コンピタンス)をどのような点で設定するかも企業戦略上では重要なポイントとなる。これにキャリア・デザインを当てはめれば、当然これはコンピテンシーということになる。したがって、会社や事業のコア・コンピタンスを支えるのは従業員個々人のコンピテンシーであるはずである。
また、企業のコア・コンピタンスとの関連で言えば、経営資源の有効活用を志向するためには、不安定要素の大きい投資はなるべく避け、アウトソーシングや提携などによるコストパァフォーマンスも多用される。こうした場合にアウトソーシングの対象となる分野に属している業務ではキャリア・デザインは難しい。
しかし、個人のキャリアは、文字通り個人の重要な資源であるから、会社や組織の戦略転換によって左右されたとしても、最終的な責任は個人に帰するものである以上、多様なキャリアを蓄積することで、シナジー効果が期待できることもある。企業経営において、余剰資源を活用したり、製造技術を活用する場合と同じ理屈である。
企業という大きな船に乗り合わせてしまった以上、ある程度は運命共同体としての行動が優先されるのは当然のことであるが、だからといって、常に個人がその犠牲を強いられているというわけではない。要は、これらの構成要素をモニターしながら、自己の理念に照らし合わせたキャリア・デザインを構築していく知恵が必要ということになろう。
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