企業の成長目標を達成するための最後の方策は、多角化戦略である。多角とは新製品をもって新市場に参入することというのがアンゾフの「製品・市場マトリックス」の定義である。したがって、この戦略は企業が新たに新事業を立ち上げるのと同様の形をとることになるので、市場にも製品にもシナジー効果が期待できない。
しかし、新事業を立ち上げるといっても、現実に操業している企業である以上、全くの新規開業とは異なり、それまでの業績やブランド力などは、経営のシナジーとして働くため、かなり有利に戦える可能性は高い。つまり、多角化戦略を選択する場合は、何らかのシナジー効果が期待できることが重要な鍵となる。
シナジー効果の主なものは、?販売シナジー:流通経路、販売組織、商品倉庫を共通に利用できること、共同広告や共同販売促進、ブランド・イメージの利用など。?生産シナジー:生産施設、人員を共通に利用して間接費を分散することや原材料の一括大量購入によるコストの節約、共通して活用できる技術の蓄積など。
?投資シナジー:工場・機械設備・工具の共同利用、共通原材料の在庫によるコストの節約、研究開発の過程での類似品の開発の可能性が高まる。?経営管理シナジー:経営者・管理者の能力やノウハウを複数の事業に適用できる。過去に経験した経営管理上の問題が他の事業で発生した場合、その経験が早期解決に役立つ。
多角化戦略のタイプとしては、水平的多角化、垂直的多角化、集中型多角化(同心円的多角化)、集成型多角化(コングロマリット型多角化)などがあり、これらの戦略を採用する動機は、主力製品の需要の停滞、収益の安定、リスクの分散、余剰資源(資金、設備、技術、信用、ブランドなどの組織スラック)の有効活用などである。
しかし、多角化戦略は、不確実性やリスクの高い戦略であることは確かであり、特に近年は多角化が裏目に出たという例も多く見受けられることから、導入に当っては綿密な検討が望まれるところである。中小企業の場合は特に多角化の動機?シナジー効果?戦略のタイプの整合性に問題があるケースが散見される。
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